著者:Matt Hougan、Bitwise 最高投資責任者
翻訳:Chopper、Foresight News
先週、ビットコイン価格が6万ドルを割り込み、2024年以降の最安値を記録した。今回の下落には多くの要因があるが、最も核心的な引き金は、Strategy社が発行した永久優先株「STRC」だ。
STRCとMSTRについて、多くのクライアントから質問をいただいた。これらは現在のサイクル局面を映し出しているため、ここで解説したい。
STRCとは何か?
STRCはStrategyが昨年導入した優先株商品で、高利回りを投資家に提供しつつ、価格を額面価格である100ドル付近で安定的に維持する設計になっている。
発行当初、STRCの年率配当利回りは9%だった。100ドルの目標価格を維持するため、同社は「市場価格が100ドルを割り込んだ場合、配当を0.25%~0.5%引き上げる」と表明していた。より高い利回りが買いを呼び、価格を額面の100ドルへ押し戻す仕組みだ。
この仕組みは当初、機能した。Strategyは配当を段階的に11.5%まで引き上げ、STRCの株価は長らく100ドル近辺で推移していた。高利回りでリスクがほぼないように見える商品は広く人気を博し、投資家は累計で105億ドルをSTRCに投じ、同社はその調達資金をすべてビットコインの買い増しに充てた。
ここ数週間、ビットコインとMSTRの株価が同時に軟化し、StrategyがSTRCの配当を支払う能力と意思があるのか市場が懸念し始めた。STRCの価格はその懸念に反応して急落し、最低75ドルまで下げた。
投資家の不安は妥当か?
妥当でもあり、そうでもない。
貸借対照表全体を見れば、同社のファンダメンタルズは極めて堅固だ。496億ドル相当のビットコイン、26億ドルの現金を保有し、総負債は68億ドル、優先株の合計は155億ドルである。仮に現在すべてのビットコインを売却すれば、その資金で今後28年分の全配当支出をまかなえる計算になる。
ただ、核心的なすれ違いは、同社が配当の支払いを停止するかどうかだ。StrategyにはSTRCの配当を自主的に停止する権利がある。配当は累積で計上されるのみで、現時点では強制的な支払い義務はない。ビットコインの下落が続けば、同社のキャッシュフローが圧迫され、いつでも配当を停止できるのではないか、という懸念が市場の不安を増幅させた。
結局、同社は配当を停止したのか?
していない。
今週月曜日、Strategyは新たな運営方針を発表した。同社は状況を見極めながら一部のビットコインを売却し、配当支払いに充当する。また、これまでのように配当引き上げによって額面100ドルを維持する方針を撤回し、STRCを自由に価格変動させる。さらに、同社は流通市場でSTRCを自社株買いする可能性もあることも示した。
発表後、MSTRとSTRCの株価はともに大きく反発した。
なぜStrategyは単純に配当を引き上げて価格を下支えしなかったのか?
額面の100ドルに戻すために必要となる配当の引き上げ幅が、耐えがたいほど大きかったからだ。
同社が当初想定していたのは、小幅な金利調整による株価安定だった。しかし、STRCが75ドルまで下落した時点で、市場の実質利回りはすでに15.4%に達していた。仮に配当引き上げのみで額面まで戻すなら、名目配当利回りを11.5%から約4ポイント大幅に引き上げ、15.4%にする必要があった。
仮に引き上げたとしても、効果は不透明だった。配当の大幅な引き上げは「どうやって高い配当を払い続けるのか」という市場の疑念を強め、新たな売りを呼ぶ可能性すらあった。
75ドルという価格は100ドルの額面から乖離しすぎており、短期間の配当引き上げでは取り戻せなかった。
新方針の下で、STRCは再び100ドルに戻るのか?
必ずしも戻るとは限らない。同社は制度的な手段で株価を100ドルに釘付けにすることをやめた。公式に配当は12%に引き上げられたが、STRCが100ドルを回復するには、ビットコイン価格の大幅な上昇が必要になるだろう。
この一連の変化は何を意味するのか?
市場の見方は大きく割れているが、私の見解では、Strategyのビットコイン市場における役割は根本的に変わった。
過去数年間、同社は世界最大のビットコイン買い手であり、一方向の買い注文を市場に供給し続けてきた。この段階は概ね終了した。今後は、同社は相場に応じてビットコインを売買するようになり、買うだけの存在ではなくなる。
はっきりさせておきたいのは、Strategyが大規模な売却に動くとは考えていないことだ。毎年数十億ドル相当のビットコインを強制的に手放さなければならない条項は存在しない。ビットコインが強気相場に入れば、Strategyは再びネット買い越しに転じる可能性が高い。
ただ、次のサイクルにおいて、Strategyがビットコイン相場に与える影響力は、前回よりもはるかに小さくなるだろう。
Strategyに代わるビットコインの最大の買い手は誰か?
機関投資家の資金だ。
ビットコインの発展の歴史のなかで、市場をけん引する買い手は常に入れ替わってきた。サイファーパンク、アジアの投資家、米国の個人投資家、グレースケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)、MSTRと、主導権は次々に引き継がれてきた。次の相場で中心的な資金流入源となるのは、世界中の銀行、資産運用会社、年金基金、大学基金、ソブリン・ウェルス・ファンド、独立系ファイナンシャル・アドバイザーといった、さまざまな機関投資家だと私は判断している。彼らは世界で最も巨大な資金プールを握っている。
この流れを裏付けるシグナルは数多い。モルガン・スタンレーは最近独自のビットコインETFを立ち上げ、ウェルズ・ファーゴはビットコインを標準的な資産配分モデルに組み込んだ。昨年、テキサス州は米国で初めて戦略的ビットコイン準備金を設立した州となった。複数のソブリン・ファンドや国家レベルの銀行がビットコインを組み入れるか、関連調査プロジェクトを開始している。2026年のビットコインETFは資金流出に見舞われているが、2024年のローンチ以来の累計純流入額は500億ドルを超えており、主要な投資プラットフォームではすでに関連商品が提供されている。
Strategyに清算・ロスカットのリスクはあるのか?
現在のデータから見て、そうしたリスクはまったく存在せず、各種の清算や暴落を唱える論調はいずれも財務ロジックに合わない。前述のとおり、同社の流動資産の合計は520億ドルに対し、総負債はわずか70億ドルだ。ビットコインが70%以上暴落し、長期にわたって低水準で推移するような事態にならない限り、同社が存続危機に陥ることはない。
市場の懐疑派は、150億ドルを超える優先株の支払い圧力を長期的な弱材料と見なすが、極端な状況では同社は優先株の配当停止を選択でき、リスクは制御可能だ。
これは現在の市場がどの段階にあることを示しているのか?
STRCの激しい変動とMSTR株価の調整は、サイクル終盤の典型的な特徴だ。あらゆる金融市場は、暗号資産市場を含めて、強気と弱気のサイクルロジックが高度に統一されている。まず強気相場が展開され、続いて投資家が貪欲にレバレッジをかけ、多数の金融派生商品が次々に生まれる。市場でリスクの破裂点が生まれ、相場が反転する。市場が清算され、過剰なレバレッジがすべて吐き出されて初めて、真の底が現れる。
STRCはまさに、今回のサイクルにおける金融レバレッジの典型産物だ。安定した高利回りを求める資金がSTRCに流れ込み、同社はその資金でビットコインを購入する。簡単に言えば、「低ボラティリティで安定したリターンを求める」資金が、最終的に変動の激しいビットコイン資産に流れ込んだのだ。
こうした種類の資金はもともとビットコイン資産の特性と合致しておらず、完全に市場から退出しなければ、相場は底を打てない。まさに現在、そのプロセスが進んでいる。
暗号資産市場の歴史でも、まったく同じ構図が演じられている。2019~2021年の強気相場では、GBTCの受益証券が長期間にわたり、裏付けとなるビットコイン純資産価値に対して大幅なプレミアムで取引されていた。機関投資家は額面でGBTCを申し込み、半年のロックアップ期間後に流通市場で20%~50%のプレミアムを乗せて売却できた。この仕組みを通じて巨額の資金がビットコインに流入し、多様で複雑な金融商品が作り出された。2021年以降、トラストのプレミアムは急速に消滅し、各種レバレッジ商品が集中的に整理され、市場はそれに伴って底打ちした。
今回の相場も、高い確率で同じ道筋をたどるだろう。
市場の底はいつ訪れるのか?
正確な時期を言うことはできない。誰にも底を正確に予測することはできず、振り返って初めてはっきり確認できるものだ。
しかし、底打ちを示すいくつかの先行シグナルを重点的に追跡できる。第一に、MSTRの株価が純資産価値(NAV)を下回るディスカウント状態で取引されることだ。これは市場心理が強欲から徹底的な恐怖へ変わったことを示し、底が近い明確なシグナルとなる。第二に、暗号資産恐怖&強欲指数が歴史的な極値まで低下し、極度の恐怖領域に入ること。このときには仕込みの妙味が出てくる。第三に、ビットコインの先物契約のファンディングレートが継続的にマイナスとなり、個人投資家の売り志向が買い志向を大きく上回り、市場心理が完全に悲観に染まることだ。
簡単にまとめると、相場が極度の悲観に達してこそ、反転の好機が生まれる、ということだ。
現在、市場はレバレッジ解消のプロセスの最中にあり、STRCが引き起こした連鎖的な変動は、サイクルにおいて必ず通過しなければならない局面だ。暗号資産のどのサイクルも、苦痛を伴うが必要不可欠な、このデレバレッジ段階を経験する。
市場が調整と整理を続けるなかで、私は底がすでに目前に迫っており、今年の秋には新たな強気相場が始まると確信している。


