8月7日、XはCreator Revenue Sharing(クリエイター広告収益分配プログラム)の新規登録受付を正式に停止すると発表した。既存参加者への分配は9月7日で終了し、最終支払いは9月11日に入金される見込みだ。
これに代わるのが、まったく新しいプログラム「Original Content Rewards(オリジナルコンテンツ報酬プログラム)」で、9月8日から申請受付が開始される。旧プログラム参加者は全員、新たに申請する必要があり、自動的な移行は行われない。
Xは公式発表で極めて率直に、「旧プログラムのインセンティブ設計は歪んでしまった」と述べ、クリエイターは個人収入の最大化ではなく、プラットフォームへの純粋なコンテンツ増加に注力すべきだとした。
わかりやすく言えば、これまでのインセンティブ制度は、転載・コピペアカウント、AI生成コンテンツ、エンゲージメント釣りアカウントを大量に養い、大いに悪用されてきたため、Xが根本から立て直す決断を下したということだ。
新旧プログラムの具体的な変更点
旧プログラムの仕組みはシンプルだった。投稿が十分な表示回数を獲得し、リプライ欄に広告が表示されれば、収益の一部が得られる。内容がオリジナルの深い分析であろうと、TikTokからダウンロードしてウォーターマークを付け再アップロードしただけであろうと、システム上は区別されなかった。この仕組みが「リポスト即収益」のアカウントを大量に生み、AIによるバルクコンテンツ生成をビジネス化させた。
新プログラムでは、3つの面で根本的な調整が行われた。
何に対して支払われるのか?
旧プログラムが広告収益分配に基づいて収入を計算していたのに対し、新プログラムは「適格表示回数(qualified impressions)」に基づいて報酬を支払う。適格表示回数の定義は非常に厳格で、Premium有料会員がホームフィードであなたの投稿を目にし、かつ投稿の50%以上が表示された場合のみカウントされる。同一ユーザーの同一投稿に対する表示は1回のみ。有料プロモーション、人為的な水増し、不正な表示は対象外となる。
どのようなコンテンツが対象となるのか?
新プログラムは「オリジナルコンテンツ」を明確に定義している。つまり、あなた自身が執筆、撮影、デザイン、制作した、あなた自身の声、見解、専門知識を反映したコンテンツだ。論評、分析、ニュースイベントの解説はいずれもオリジナルに該当するが、重要なのはあなたの貢献が投稿の価値の主たる源泉となっていることだ。
以下のものはオリジナルとはみなされない。他者のコンテンツを直接コピーして投稿すること、Xや他プラットフォームからダウンロードしたものを再アップロードすること、ウォーターマーク付加、フィルター変更、速度調整、フレーム追加などの軽微な修正のみを加えたもの、実質的な見解を伴わない単純な転載やアグリゲーション。
誰が参加できるのか?
参加条件は緩和された部分と厳格化された部分がある。表示回数の要件は旧プログラムの高条件から過去90日間の有料会員ホームフィード表示回数50万回へと引き下げられ、フォロワー要件も認証済みフォロワー500人に緩和され、参入ハードルは下がった。しかし、「オリジナルコンテンツ実績」の審査要件と、コンプライアンス違反時にはプログラム出場停止または永久除外、異議申し立て失敗後90日間の再申請禁止、といった継続的なコンプライアンス制度が新設された。
特に注目すべきは、戦争に関連するAI生成動画をAI生成表示なしで公開した場合、初回違反は90日間の出場停止、再犯は永久追放となる点だ。
クリエイターへの実践的アドバイス
自身のアカウントが新条件を満たしているか、すぐに確認しよう。認証済みフォロワー500人と、Premiumユーザーのホームフィード表示50万回は絶対条件だ。もし差が僅かなら、これからの1ヶ月はラストスパート期間となる。注意すべきは、リプライ欄での表示回数はカウントされないという点だ。
今すぐ意識的に「オリジナルコンテンツの実績」を積み始めよう。新プログラムの審査では、あなたの投稿履歴がチェックされる。過去の投稿の90%がリポストや転載なら、申請はほぼ確実に通過しない。今から9月8日まで、コンテンツ構成を見直すための1ヶ月がある。
「いいね+リポスト+フォロー」のようなエンゲージメント釣り投稿は、やめよう。継続的なコンプライアンス条項により「エンゲージメントの勧誘」は明確に禁止されており、ユーザーに交流を繰り返し求める行為はプログラムからの除外対象となる。
「適格表示回数」の計算方法を理解しよう。
Premium会員がホームフィードであなたの投稿を表示した場合のみカウントされる。これは、クリエイターの収入がXのPremiumサブスク加入者数に直接リンクすることを意味する。Xの有料会員が増えれば増えるほど、クリエイターの収入プールも大きくなる。Xが今回の調整を行うビジネス上の理由もここにある。旧プログラムは広告収益分配に依存していたが、新プログラムの基本的なロジックは、クリエイターインセンティブによって、より多くの人にPremium登録を促すことにある。
もしあなたの主なコンテンツが評論や分析(多くの暗号資産KOLがこれに該当する)であれば、「オリジナル性が足りない」と心配する必要はない。Xのポリシー文書には明確に、ニュースイベントの分析、解説、論評はオリジナルに該当すると書かれている。大切なのは、素材が他人のものであっても、あなたの判断や見解こそが投稿の主たる価値だということだ。
Xは何に賭けているのか?
一歩引いて見れば、この調整のビジネスロジックは複雑ではない。
旧プログラムは広告収入からクリエイターに分配していたため、増え続けるクリエイターを養うために、Xはより多くの広告を販売し続ける必要があったが、Musk買収後、プラットフォームの広告収入は圧力にさらされ続けていた。新プログラムは支払いの原資を広告分配からPremium会員の表示回数へと切り替えた。その本質は、クリエイターをPremiumサブスクのセールス担当者に変えることだ。あなたのコンテンツが良質であればあるほど、多くのPremium会員を惹きつけ、あなたの収入は増え、Xのサブスク収入も増える。
これは、OpenAIがChatGPTを無料公開しているのと似たロジックだ。プラットフォーム層は無料で顧客を獲得し、エコシステム層から収益を得る。Xの「プラットフォーム利用料」が、Premiumサブスク料金というわけだ。
新プログラムが転載やAIコンテンツファーム問題を本当に解決できるかどうかは、Xのオリジナルコンテンツ識別システムがどこまで精度を発揮できるかにかかっている。もし審査の仕組みが人力によるサンプルチェックのレベルにとどまれば、転載者はより巧妙に偽装するだけで、搾取を続けられるだろう。しかし、Xが自社のGrokモデルを使ってオリジナル性の自動検出を行えば、精度は予想外に高くなる可能性がある。結局のところ、Xはほぼ全ての投稿の公開タイムスタンプを保有しているため、誰が先に投稿し、誰が後か、データはそこにあるのだ。
申請受付は9月8日に始まる。暗号資産とAIのクリエイターにとって、これからの1ヶ月は、コンテンツ戦略を調整するための貴重な猶予期間となるだろう。


