作者:小饼
著名な暗号VC Paradigmは昨日、RSI Simulatorというブラウザゲームを公開した。
プレイヤーはAI研究所の責任者を演じ、ゼロから超知能を作り上げることを目指す。
手元には人材、計算能力、データという三つのリソースがあり、どれだけを研究開発に、どれだけを訓練に、どれだけを拡張に投入するかを決める必要がある。各ラウンドの意思決定後、モデルの能力が変化し、能力の変化がさらに研究開発効率に影響を及ぼす。ある臨界点に達すると、AIは自らを加速的に改良し始め、曲線は急上昇する。
一見すると放置系ゲームのように聞こえる。実際には、これは経済学の論文をインタラクティブな体験に変えた教育ツールだ。
Paradigmはこれを用いて、誰もが推測しているがほとんど定量化して考えられてこなかった問いに答えようとしている。AIの自律的改良の速度は一体どれほど速いのか?突如爆発的に加速するのか?その上限を決める要因は何か?
再帰的自律改良とは?
再帰的自律改良(Recursive Self-Improvement、略称RSI)は、AI安全性研究において最も中心的なテーマの一つだ。
簡単に言えば、AIモデルが十分に強力になり、人間が次世代のAIモデルを改良するのを支援できるようになったとき、循環が生まれる。AIがより強力なAIの製造に関与し、そのより強力なAIがさらに強力なAIの製造に関与するのだ。
この循環が一旦始まると、理論的には指数関数的な加速、いわゆる「知能爆発」を引き起こす可能性がある。
これはもはやSFではない。2026年2月、OpenAIはGPT-5.3-Codexを発表した際、そのモデルの初期バージョンが自分自身の生成プロセスにおいて「重要な役割を果たした」ことを認め、訓練プロセスのデバッグ、デプロイ管理、評価の故障診断を支援したと述べた。これは、あるモデルが後継モデルの製造というエンジニアリングプロセスに実質的に関与したことを、主要な研究所が初めて公式に認めた事例である。
ゲームの遊び方
RSI Simulatorのゲーム部分は、AI研究所におけるリソース配分の意思決定をシミュレートしている。
各ラウンドで、三つの方向にリソースを配分する必要がある。計算能力により多く投入すれば、より大きなモデルを訓練できる。人材による研究により多く投入すれば、アルゴリズム効率を向上させられる(より少ない計算能力で同じ効果を得られる)。データ収集に投入すれば、訓練素材の幅を広げられる。
重要な仕組みは、モデルの能力が一定水準に達すると、モデルが「研究を手伝い」始め、人間の研究効率がAIの支援によって向上するというものだ。これがRSI循環の始まりである。リソースを拡張モードから「AIが自ら研究する」モードにいつ切り替えるべきかを見極める必要がある。
切り替えが早すぎると、モデルの能力が不十分で、AIの研究効率が人間に劣り、計算能力を無駄にしてしまう。切り替えが遅すぎると、他の(仮想的な)研究所に追い越されるかもしれない。
Paradigmはさらに「エクスプローラー」(Explorer)も用意しており、ユーザーは基礎となる経済モデルのパラメーターを直接調整できる。たとえば「研究開発速度に対するモデル能力の弾力性係数」などを変更し、異なるパラメーター設定の下でAIの進歩曲線がどのように変化するかを観察できる。
この部分はよりハードコアな層を対象としており、本質的には学術論文の数学モデルをドラッグ可能なダッシュボードに変えたものである。
ゲームが伝えたい4つの洞察
Paradigmは、関連する研究記事の中で、モデルとゲームから得られた四つの認識をまとめている。
ボトルネックは常に最も弱い部分にある。 AIの研究開発には人材、計算能力、データという三つの補完的要素が必要だ。AIの知能が無限に向上しても、計算能力とデータの物理的限界は依然として存在する。再帰的自律改良は、知能そのものではなく、計算能力の供給やデータの質によって制約される可能性がある。
自律改良はパルス的であり、持続的な指数関数的成長ではない可能性がある。 AIは一段の自律的な加速期間を経験した後、計算能力がボトルネックとなれば、物理的限界にはるかに達しない地点で停止するかもしれない。知能爆発は必ずしも空へ一直線に伸びる曲線ではなく、むしろ断続的な急激な階段状の変化と、その間の停滞期からなる可能性がある。
狭い領域での知能爆発は、汎用知能の爆発よりも先に到来する可能性がある。 AIはまず「AI研究」という狭い領域で自律的な改良の加速を達成するかもしれないが、その能力がすべての認知タスクに汎化するとは限らない。AIがAI訓練コードの改良には非常に長けているが、サプライチェーンの管理や小説執筆では同等の突破口を開けないという状況を想像してみてほしい。
全てはパラメーター設定次第である。 モデルの出力は「弾力性係数」(elasticity)と呼ばれる一連のパラメーターに大きく依存する。弾力性係数は「インプットが1%増加したときに、アウトプットが何パーセント増加するか」を測定する。再帰的自律改良において最も重要な弾力性係数は、「現在のモデル能力が1%向上することで、新たな発見の速度が何パーセント向上するか」である。この数値は時間とともに変化する可能性があり、そのリアルタイムな変動を追跡することが極めて重要だ。
なぜParadigmなのか?
Paradigmはもはや単なる暗号VCではない。
1か月前、Paradigmはちょうど12億ドルの新たなファンドの資金調達を完了した。この資金の使途は過去3つのファンドとは大きく異なり、共同創業者のMatt Huang(元セコイア・キャピタルのパートナー)とマネージングパートナーのAlana Palmedoは発表文の中で、ファンドが「暗号資産を起点に、AI、ロボティクス、その他先端領域へと拡張する」と記している。
Paradigmは2018年の設立以来、累計40億ドル以上を調達し、Uniswap、Optimism、Hyperliquid、Kalshiといった暗号業界を代表するプロジェクトに投資してきた。
現在、Paradigmの投資領域は明らかに枠を超えている。3月にはドローン配送会社ZiplineのHラウンドをリード投資し、4月には宇宙防衛企業True AnomalyのDラウンドに参加、さらにAI研究所Nous Researchにも投資した。
内部ツールの面でもAIへの展開が進んでいる。ParadigmはCentaur(AIエージェントツールセット)やEVMbench(OpenAIと協力したブロックチェーンセキュリティ評価プロジェクト)を開発しており、一方の足はオンチェーンに置きながら、もう一方の足はすでにAIインフラへ踏み込んでいる。
このような背景の中で、RSI Simulatorは単なるPRプロジェクトではない。Paradigmは12億ドルの新たな資金で、「AIの加速、分散型コンピューティング、そして自動化インフラ」という先端技術の交差点に賭けているのだ。
RSIの経済学を理解することは、彼らの最大の賭けの基盤となるロジックを理解することである。もしAIの自律的改良速度が、ゲーム内の特定のパラメーター設定による曲線に沿うならば、技術スタック全体の更新サイクルは圧縮され、今日3年リードしているように見えるプロジェクトも、6か月後には淘汰されているかもしれない。
Paradigmは記事の末尾で、RSIモデリングの最先端を推し進めるあらゆる取り組みに関心があると述べ、関連分野の研究者に連絡を呼びかけている。このゲームは一枚の名刺であり、その背後には12億ドルと、変革しつつある投資機関が存在する。
ゲームアドレス:https://www.paradigm.xyz/research/rsi/game
モデルエクスプローラー:https://www.paradigm.xyz/research/rsi/explorer



