著者:Ekko An、Jay Jo、Tiger Research
翻訳:Luffy、Foresight News
韓国は3度の延期を経て、2027年1月に暗号資産のキャピタルゲイン課税を正式に開始する。発効日まで残り3カ月余りとなり、関連する議論の熱は高まり続けている。国会に提出された関連請願書は5万人超の賛同を集めた。議論が再燃する中、単なる賛成・反対の次元にとどまらず、現行の課税案が暗号資産の実際の取引実態に適合しているかを検証する必要がある。
暗号資産の投資収益に課税すること自体と、現行案が実際に執行可能かどうかは別問題である。暗号資産は国内取引所、海外取引所、個人ウォレット、分散型取引所(DEX)の間を流通し、投資家は異なる暗号資産同士の交換も頻繁に行う。この税制を正常に機能させるには、断片化した取引記録を統合し、統一ルールで保有コストと実際の損益を計算しなければならない。
問題は、この付随システムが完全に構築されていない場合、投資家と税務当局の双方が負担を負うことだ。投資家は取引記録と保有コストを自ら検証・立証する必要があり、税務当局も課税対象所得と課税標準を正確に特定することが難しい。したがって核心的な論点は課税の可否だけではなく、実際の取引実態の下で、投資家が損益を正確に計算して申告できるか、取引記録を効果的に追跡できるかにある。
だからこそ、現在の議論は課税への賛成・反対にとどまらず、現行案が実際の取引実態に適合しているか、投資家の懸念がどこにあるか、そして課税が取引行動と国内市場の構図をどう変えるかを評価する必要がある。
韓国の暗号資産投資家は暗号資産税をどう見ているか
Tiger Researchは韓国の世論調査機関PMIと共同で、2423人の韓国暗号資産投資家を対象に調査を実施した。アンケート内容は、課税への態度、導入時期、現行案の合理性、申告・納税システムの整備度、課税導入後の投資家の取引行動の予想変化を網羅している。
韓国暗号資産税反対者の年齢分布
各年齢層で暗号資産課税への反対の声が上がっており、全体では73.7%の回答者が反対の立場を示した。20代・30代・40代の反対率はいずれも75%を超え、50代・60代以上の回答者の反対率はそれぞれ61.5%、63.9%だった。20代から40代の反発が最も強いが、反対の声は若年投資家だけのものではない。
韓国の暗号資産投資家は課税を全面的に拒否しているわけではない
単純な賛成・反対だけでは投資家の見解を十分に表せない。課税に反対する回答者のうち、51.5%は現行案の問題が適切に解決されれば課税を受け入れられると回答した。一方、暗号資産に課税すべきだと考える回答者のうち、74.5%は現行案をそのまま実施するのではなく、延期または修正すべきだと考えている。
調査結果は、多くの投資家が「暗号資産に課税すべきか」と「現在の課税案が実行可能か」を区別できていることを示している。課税に反対する投資家の一部は制度が整えば受け入れ可能とし、課税原則に賛成する人々の多くも現行案の直接導入を支持していない。投資家が具体的なルールとシステムの準備状況を評価する際、この相違はより明確になる。
投資家の現行課税案に対する主な懸念
韓国投資家の暗号資産税に対する各懸念の割合
調査の詳細な結果は、投資家が「課税そのもの」と「課税案」を区別する理由を明らかにしている。懸念は大きく3つの方向に集中している。
- 他の金融資産と比較して、税率と控除額が適切かつ公平か
- 課税対象となる収益を計算する際、損失と取得コストを正しく考慮しているか
- 税務申告・納税、取引追跡、投資家保護を支える準備ができているか
投資家は暗号資産に課税すべきかだけでなく、税負担の水準、課税対象収益の計算方法、制度全体が実行可能かにも関心を持っている。以下の章ではこの3つの問題を検討する。
税負担は公平か?
韓国で暗号資産税が導入された場合の、年齢層別投資家の取引行動の変化予想
回答者の大半は現行案の税負担に否定的な見方を示した。全回答者のうち、73.5%が22%の税率は高すぎると考え、65.2%が年間約1800ドルの基礎控除額は低すぎると考えている。また72.1%は、暗号資産の税制が他の金融資産と比べて不公平だと回答した。
所得別に見た、暗号資産税に反対または延期を支持する人の割合
低所得の投資家も強い懸念を示している。月収約2100ドル未満の回答者は全体の24.9%を占め、このグループの87.9%が現行計画どおりの導入に反対し、再延期を求めた。これは全回答者の平均82.9%を上回る。現行案への懸念は高所得投資家だけのものではないことが分かる。
7割の投資家が暗号資産税は若者の資産形成を妨げると考える
回答者は政策が若者の資産形成を制限することも懸念している。全体では、73.0%の回答者が暗号資産税は20代・30代の資産形成の機会を制限する可能性があると考えた。20代の懸念が最も高く78.7%、30代が77.2%で続いた。他のすべての年齢層でも、この見解を支持する割合は65%を超えている。
調査が示すのは、投資家の懸念が税率と控除額にとどまらず、他の金融資産と比較してルールの公平性を判断していることだ。低所得層も同様に敏感であり、各年齢層が若年投資家への政策の影響を注視している。投資家は税負担の大きさと、政策が異なる人々にもたらす差別的な影響を同時に考慮している。
課税対象収益は正確に計算できるか?
投資家の現行暗号資産税フレームワークの核心条項に対する懸念
課税対象収益を正確に計算するには、税制が投資家の実際の損益を計算でき、損失・保有コスト・各種暗号資産収入について明確なルールを定めている必要がある。調査では、投資家がこの3つの側面すべてに強い懸念を抱いていることが分かった。
まず、65.9%の回答者が現行の損失処理ルールは不合理だと考えている。現行ルールでは、投資家は同一年度内で暗号資産の損失を利益と相殺できるが、損失を翌年度以降に繰り越して将来の収益と相殺することはできない。
暗号資産投資家の損益は複数年度にまたがることが多く、損失の繰越控除ルールは課税対象所得の計算精度に直接影響する。
投資家の保有コストと取引記録の追跡に対する懸念はさらに顕著だ。70.6%の回答者が、自身の取引記録と保有コストに基づいて損益を自ら計算・申告する負担が重すぎると懸念している。
暗号資産は韓国国内と海外のCEX、個人ウォレットの間を流通し、投資家は異なる通貨の交換も頻繁に行う。取引経路が複雑になるほど、投資家は元の保有コストとその後の取引を一対一で対応させることが難しくなる。
暗号資産の収入源は、取引、貸付、ステーキング、エアドロップ、流動性マイニングなど非常に多様だ。現行の税制フレームワークは主に資産譲渡と貸付から生じる収益を対象としており、どの収益に課税されるのか、納税時点はいつかについては、さらなる明確化が待たれる。約65%の回答者が、現行フレームワークは各種取引シナリオを十分にカバーできないと考えている。
以上をまとめると、投資家の関心は税率だけではなく、損失処理、保有コストの認定、異なる種類の収入の定義にも及ぶ。これらのルールが最終的に、実際の損益に基づいて暗号資産の課税対象所得を正確に計算できるかを左右する。
付随システムは準備できているか?
投資家の暗号資産税導入に伴う準備作業への懸念
税制には明確なルールだけでなく、行政・ITシステムによる実行支援も必要だ。調査では、66.4%の回答者が韓国政府の関連準備は不十分だと考え、65.7%が国内CEX・海外CEX・個人ウォレットをまたいだ完全な追跡と課税は難しいと回答し、68.8%が投資家の申告・納税負担は重いと考えている。投資家は法規の条文だけでなく、制度が実務レベルで機能するかも懸念している。
暗号資産の取引は韓国国内CEXから離れて行うことができる。投資家が海外CEXや個人ウォレットを使えば、取引データは複数の経路に分散し、課税のために集約することが難しくなる。信頼できる取引追跡と投資家の申告負担は、重点的に検討すべき問題だ。
行政・IT準備に加えて、85.1%の回答者が、課税導入前に投資家保護の枠組みを確立しなければならないと考えている。課税は投資家に新たな納税義務を課すものであり、税務徴収管理のほかに、市場保護メカニズムも導入の必須条件に含まれる。
回答者の2027年暗号資産税導入に対する見方
導入時期に関する調査結果は、この懸念をさらに裏付けている。82.9%の回答者が現行案の予定どおりの執行に反対するか延期を求め、75.2%が2027年の導入は時期尚早だと考えている。アンケートでは、導入延期を選んだ1823人の回答者に、予定時期までにルールと付随準備が完了しなかった場合どうすべきかを尋ねた。そのうち93.4%が、システムの準備が整うまで課税を再び延期すべきだと回答した。
投資家にとって核心は単に数年延期することではなく、導入の基礎条件が本当に整っているかにある。それには税務徴収管理、取引データ管理、申告システム、投資家保護が含まれる。
韓国市場への潜在的影響
韓国取引所から海外取引所へ流出する資金の規模
投資家の課税案への態度は、政策導入後の取引行動の変化を予兆している。大量の韓国暗号資産資金はすでに海外へ流出している。Tiger Researchの以前のレポートの推計によると、2021年から2026年上半期にかけて、約700兆ウォン(約4900億ドル)の資金が海外へ流出した。投資家はすでに海外取引所や個人ウォレットなど、国内CEX以外の取引経路を広く利用している。
今回の調査では、課税導入後の投資規模と取引経路の変化を評価した。結果は、投資家が投資を縮小し、国内CEXの利用を減らして他の取引経路へ移行する可能性を示している。この予想が実際の行動に転じれば、韓国暗号資産市場の取引基盤を弱め、税務当局による課税対象活動の追跡や市場監視の難度も高めることになる。
国内CEX、ひいては韓国暗号資産業界全体への打撃
調査は、課税が暗号資産への投資意欲を低下させ、国内CEXの利用を減らすと予測している。69.7%の回答者が暗号資産投資を減らすか中止すると答え、73.1%が韓国国内CEXの利用を減らすと回答した。これは暗号資産市場の資金総量を減らし、同時に国内取引所の取引量を低下させる。
66.4%の回答者が、課税は韓国暗号資産市場に悪影響を及ぼすと考えている。投資家が暗号資産のエクスポージャーを減らし、他の金融資産へ移行すれば、国内市場の取引量と流動性は低下する。
韓国大手3暗号資産取引所(Upbit、Bithumb、Coinone)の取引量と売上高
Tiger Researchは今回の調査データと、すでに暗号資産税を導入した国の取引量の変化を組み合わせ、大手取引所の取引量と売上高の変動を推計した。試算によると、韓国大手3取引所Upbit、Bithumb、Coinoneの年間取引量は2026年の約6010億ドルから2027年には4210億ドルへ減少し、約1800億ドル、30%の縮小となる見込みだ。同期間の3取引所の売上高は7.22億ドルから5.09億ドルへ減少し、2.13億ドル、29.5%の減少が予想される。
取引の縮小は暗号資産業界全体の税収にも影響する。手数料の低下は付加価値税収入の減少をもたらし、取引所の利益低下は法人所得税を押し下げる。
暗号資産収益への課税は新たな税源を生み出せるはずだが、国内市場の縮小は既存の税収を同時に圧迫し、新税による全体の増収効果を弱める。国内CEXの流動性とユーザー規模の縮小は、カストディやプライムブローカーなど付随金融サービスの基盤も揺るがす。
取引のオフショア経路への移行と、CARFフレームワークの限界
韓国投資家のグローバル中央集権型取引所(CEX)と分散型取引所(DEX)の利用状況
課税導入後、投資家が国内CEXでの取引を減らせば、一部の資金は海外CEXや個人ウォレットへ流れる。国内取引所の利用を減らす予定の投資家のうち、88.0%が海外CEXまたは自己管理ウォレットの利用を増やす可能性があると回答した。全回答者のうち、60.0%がすでに海外CEXを利用したことがあり、33.3%がDEXを利用したことがある。
年齢別に見た、投資家が予想する取引経路の変化
若年投資家ほどオフショア経路への移行意欲が強い。20代の回答者のうち、76.8%が課税導入後に海外CEXをより多く利用すると答え、73.2%がDEXや個人ウォレットのP2P取引を増やすと回答した。すでに海外取引所やオンチェーンサービスを利用している投資家は、取引を国内プラットフォームの外へ移しやすい。
より多くの取引が国内サービス事業者の外へ流出すれば、税務当局が完全な取引情報を取得する難度は高まる。暗号資産の申告フレームワークCARFはこのギャップを緩和できる。CARFは暗号資産サービス事業者にユーザーと取引情報の報告を義務付け、各国の税務当局間で関連データを交換できるようにするものだ。
しかし各国がCARFデータ交換を開始する時期は統一されていない。韓国は2027年の開始を計画しているが、中国香港、シンガポール、UAEは2028年、米国は2029年まで待つことになる。この時間差により、課税初期の海外取引データの取得は制限される。
異なる暗号資産税管轄区域における、CARFの対象外となる取引の割合
同時にCARFはすべての取引経路をカバーできない。Chainalysisのデータによると、2025年に日本のCEXから流出した資産のうち、59.1%がCARFの対象外となる経路へ流れた。英国は65.2%、米国は75.4%、イタリアは76.6%だった。イタリアのこの割合は2024年の50.4%から2025年には76.6%へ上昇し、同期間に個人ウォレットへ移された資産は45.7%増加した。
上記のデータは課税が資金流出を直接引き起こしたことを証明するものではないが、暗号資産の課税・申告制度をすでに確立した国でも、サービス事業者の報告だけでは完全に追跡できない相当規模の取引が存在することを示している。
この情報ギャップは税の公平性の問題ももたらす。税務当局はサービス事業者の報告を通じて国内CEXの取引を容易に検証できるが、海外CEXや個人ウォレットの取引は投資家の自主申告と事後検証に依存する割合が高い。投資家が取引経路ごとの監視・追跡の強度に大きな差があると認識すれば、取引の海外CEXやDEXへの移行がさらに進むことになる。
課税導入前に、韓国政府は保有コストの認定や情報申告に関するルールを明確にするとともに、海外CEXや個人ウォレットの取引から生じる損益を検証する仕組みを構築する必要がある。
拙速な課税導入は業界と税収を損なう
核心的な矛盾は課税の可否ではなく、付随システムが未整備の状況で、韓国が2027年に現行案を導入すべきかどうかにある。現行法では暗号資産の所得税は2027年1月に発効すると定められている。今回の調査は、投資家が課税原則と現行案を区別できており、暗号資産への課税に賛成する層でさえルールの最適化が必要だと考え、反対者の一部も制度が整えば課税を受け入れられるとしていることを示している。
政策立案者は、付随準備が不十分なまま課税を導入すれば市場に衝撃を与えることを評価しなければならない。前述の分析のとおり、国内の暗号資産投資と取引量は低下し、取引活動は海外CEXや個人ウォレットへ移行する可能性がある。
こうした変化は韓国国内市場の取引基盤と業界競争力を弱めると同時に、取引データを分散させ、税務当局による課税標準の追跡を難しくする。新たな税源の創出と、課税標準の安定的な管理は、別々の難題である。
政策立案者は、まずこの税制が実際の市場環境で正常に機能するかを評価すべきであり、導入日を先に決めてから後で穴を埋めるべきではない。調査が示すのは、投資家が具体的な年よりも、制度全体が準備できているかを重視していることだ。政策立案者は、まず導入の達成条件を明確にし、それから課税開始時期を決めるべきである。
重点的に注目すべき点は3つある。第一に、課税の付随準備を評価する際、市場監視の全体状況を同時に考慮すること。税務徴収管理の制度だけでは到底不十分であり、市場には明確な法規、投資家保護メカニズム、そして新たな資産・サービスの業界標準が必要だ。政策立案者は、税務当局の徴収管理能力と、課税導入が行われる市場の成熟度を同時に評価する必要がある。第二に、税制の実務上の実行可能性を検証する、実行可能な判断基準を策定すること。システムが取引データを統合し損益を計算できるか、同時に納税者が申告の誤りを修正できるかを評価する。固定の時間割やITシステムの稼働だけに頼るのではなく、実際の導入テストに基づいて準備度を評価する。第三に、実際の取引実態に即した模擬申告とパイロットテストを実施すること。テストの範囲は単純な国内CEX取引だけにとどまらず、海外CEX、個人ウォレット、DEXもカバーしなければならない。正式な課税前に、取引データの欠落、保有コストの認定、高頻度の申告ミスなどの問題を事前に発見する。
政策立案者は国民の受容度も考慮する必要がある。調査では、多くの回答者が課税は若者の資産形成の機会を制限すると懸念しており、20代・30代の層で特に強く感じられている。各年齢層が、暗号資産税が他の金融資産と比べて公平かを疑問視している。技術面の整備だけでは到底不十分であり、投資家が税負担とルールの公平性を認めることも必要だ。
2027年暗号資産税をめぐる議論は、当初の導入時期を維持するかどうかに限定されるべきではない。政策立案者は、実際の取引実態の下で課税対象の損益を正確に計算できるか、税務当局が必要な取引データを取得できるか、市場ルールと投資家保護が整っているか、そして投資家が税制の公平性を認められるかを評価する必要がある。準備不足のまま拙速に導入すれば、国内市場の競争力と課税標準の管理能力の双方が損なわれることになる。


