執筆:DCo
翻訳:Saoirse、Foresight News
Hyperliquid は徐々に全品目の取引プラットフォームへと発展しつつあり、現在ではその取引高の3分の1がすでに暗号資産由来ではない。本稿では、このトレンドが続き、暗号資産の取引高が強気相場の水準に戻り、かつ Hyperliquid がグローバルの指数先物、商品先物、株式取引市場で小さなシェアを獲得できた場合、HYPE がどのような価値に対応するのかを試算した。
- 10月、非暗号資産カテゴリーの取引は Hyperliquid の総取引高の30%を占めた。10月27日単日では40%、7月のピーク時には最高51%に達した。
- 対応するグローバルな伝統的金融市場は2025年に740兆ドル規模、年平均成長率は約6%で、2029年には934兆ドルに達する見込みだ。2029年におけるこの市場の1%のシェアは9.3兆ドルの取引高に相当し、これは Hyperliquid の現在の全取引高の3.3倍に当たる。
- 当社のベースシナリオ:2029年までに暗号資産の取引高は現在の3倍に増加。この成長を続けるグローバル市場で3%のシェアを獲得、総合手数料率は0.006%。USDC の利回りは3.6%まで低下。HIP-4 が1億ドルの売上高をもたらす。売上高は現在の9億4400万ドルから2029年には49億1000万ドルへ増加する。
- 20%の割引率で現在価値に割り引き、買い戻し後の残存8億9000万枚の HYPE を基数として、売上高倍数40倍では HYPE の目標価格は128ドルとなる。
- 楽観シナリオ(5%の市場シェアを獲得、40倍の倍数)は単価165ドルに相当する。当社が3月に発表したレポートと比べると、今回の計算で用いたトークン基数は当時のほぼ3倍であるにもかかわらず、楽観シナリオの目標価格は従来の124ドルを上回っている。
- 今や、伝統的金融市場のシェアを奪うことの影響力は、暗号資産の強気・弱気サイクルを上回っている。25倍の倍数で試算すると、暗号資産の取引高が3倍になっても HYPE の単価は約30ドル上昇するにとどまるが、市場シェアが1%から5%に上昇すれば単価は約48ドル上昇する。
- 最大のリスクは手数料にある。伝統的金融業務の手数料が CME の水準まで下がれば、30倍の倍数ではベースシナリオの目標価格は66ドルまで低下する。
暗号資産バブルを抜け出す
長年にわたり、暗号資産業界の取引市場は、サービス対象がほぼ業界内のユーザーに限られてきた。Hyperliquid はこの壁を突破した最初のプラットフォームかもしれない。自らの取引インフラを、はるかに巨大な外部ユーザーに開放できるからだ。すでに兆候は見えている。米イラン情勢が緊迫化した際や、テスラの Roadster 発表会に関連するイベントの際に、トレーダーが Hyperliquid で取引し、市場の方向性に賭けたことがあった。
こうした取引行動の変化は、その評価ロジックを再評価する必要があることを意味する。グローバル取引市場のほんの小さなシェアを獲得するだけでも、Hyperliquid の現段階の規模と比べれば十分に大きいが、そうした伝統的金融の取引高に対応する手数料ははるかに低くなる。
1年前、Hyperliquid は暗号資産取引しかサポートしていなかった。HIP-3 がそれを変えた。個別株、指数、商品、為替は今やビットコインの無期限先物と同じ証拠金口座を共有でき、トレーダーは実際にこれらの銘柄を取引している。
2025年9月から2026年10月までの Hyperliquid の月次取引高の変化を集計
非暗号資産カテゴリーの取引高比率は2025年9月の0から、2026年7月の51%へと一貫して上昇し、その後は3分の1前後で安定している。10月27日には、プラットフォームの1日総取引高72億ドルのうち40%が非暗号資産カテゴリーによるものだった。個別株は現在、規模が最大の非暗号資産取引銘柄であり、取引規模は指数と商品を上回っている。
この部分の事業はビットコインの騰落の影響を受けない。それが当社がこれを別途評価する理由である。
Hyperliquid はまだ大規模な強気相場を経験していない
当社はよく Hyperliquid はまだ大きな強気相場を迎えていないと述べているが、データはこの見方に一定の根拠があることを裏付けている。より精緻な解釈のほうが参考になるだろう。
バイナンスの2020年以降の月次取引高
当社はバイナンスの2019年以降の公開 API データを取得し、現物、USDT 建て、コイン建ての先物取引高を集計した。バイナンスの取引高の歴史的ピークは2021年5月で、4.3兆ドルに達した。当時 Hyperliquid はまだローンチしていなかった。Hyperliquid のローンチ後、市場では3回の取引高ピークが出現した。2024年3月、2024年11〜12月(月間約3.7兆ドル)、そして2025年10月(3.5兆ドル)である。
しかし、相場の高値局面の大部分において、Hyperliquid の規模はまだ小さかった。2024年の相場が加熱していた期間、その暗号資産先物取引高はバイナンスのわずか2%〜6%を占めるにとどまっていた。2025年2月になってようやく10%を突破し、その後もその水準を維持している。
Hyperliquid の暗号資産取引高の、バイナンスの暗号資産先物取引高に対する比率
現在、バイナンスの暗号資産取引高は2024年12月の高値の38%にすぎず、現物取引高は2021年5月のピークの16%にすぎない。したがって Hyperliquid の現在の年率換算取引売上高7億8100万ドルは、サイクル底の水準にある。バイナンスのピーク月の取引高は現在の2.4〜3倍であり、これが当社が「2029年に暗号資産取引高が現在の3倍になる」というベース前提を設定した根拠である。Hyperliquid はこれまで、この高水準の取引高を年間を通じて維持した段階をまだ経験していない。
主流市場への参入で手数料に圧力
Hyperliquid がグローバルの先物・株式取引市場から数ポイントのシェアを獲得したいのであれば、手数料の価格設定は老舗取引所に合わせる必要があるが、現時点ではそれはできていない。
100万ドルの名目元本を取引するごとに、Hyperliquid の暗号資産無期限先物、HIP-3の成長モード銘柄、CME の株価指数先物でプロトコルが留保する手数料収入がどう異なるか。
リベートと割引を差し引いた後、プロトコルは暗号資産無期限先物の取引高の約0.037%を留保できる。HIP-3の下の銘柄は成長モードにあり、プロトコルが留保するのはわずか0.0037%である。CME の2026年第3四半期の株価指数事業の換算収入は、名目取引金額のわずか0.0004%だった。つまり、Hyperliquid の割引後の伝統的金融手数料であっても、CME の約9倍である。
競争はすでに目の前にある。バイナンスは今年229本の TradFi 無期限先物を上場し、こうした契約の1日取引高は約134億ドルに達している。一方 Hyperliquid はわずか23億ドルだ。成長モードには締め切りが設定されておらず、チームは特定の市場向けに手数料を引き上げられる調整スイッチを1つ追加しただけである。
当社のベースシナリオでは、2027年以降、非暗号資産業務の総合手数料率を0.006%と仮定する。この料率の内訳は、非暗号資産取引高の約7%が通常料率(プロトコル留保0.037%)に移行し、残りの取引高は成長モードに留まるというものだ。この料率は依然として CME の15倍であり、モデル全体の中で最も崩れやすい仮定でもある。末尾では、料率が CME 水準まで下がった場合の評価の変化を示す。
目標:年間売上高40億ドル
当社は4つの収入源を試算して合計する。総収入の99%はアシスタンス・ファンド(Assistance Fund)に繰り入れられ、HYPE の買い戻しと流通供給の削減に充てられる。
- 暗号資産取引収入=暗号資産取引高×暗号資産手数料。取引高は年間1.98兆ドルから2029年には3倍の5.9兆ドルに増加し、現在の0.037%の料率を維持すると仮定する。
- 非暗号資産取引収入=Hyperliquid が獲得するグローバル市場シェア×非暗号資産手数料。2027年以降の総合料率は0.006%。このグローバル市場は2025年に740兆ドル規模で、年率6%の成長で推計する(この伸び率は2015年以降のグローバル株式市場の成長率と一致する。2015年は114兆ドル、2025年は204兆ドル)。2029年の市場規模は934兆ドルに達する。
- AQAv2 のルールに基づき、Hyperliquid 上の USDC 準備金の運用収益の90%がアシスタンス・ファンドに帰属する。初回の分配は30日間で1458万ドル、年率換算で1億7700万ドルに相当し、今年の51億ドルの準備金、3.9%の利回りに対応する。2029年までに利回りは3.6%まで低下し、同年の FRB の中値予測と一致すると仮定する。準備金の規模は暗号資産取引高や、新規トレーダーが入金する USDC とともに増加する。新規トレーダーの入金額は年間取引高の0.05%と仮定する。
- HIP-4 の予測市場は5月にローンチした。2029年までにこの事業が1億ドルの売上高をもたらすと予想する。
ベースシナリオにおける Hyperliquid の収入予測
総収入は5.2倍に増加し、49億1000万ドルに達する。増加した39億7000万ドルのうち、ほぼ3分の2は暗号資産取引以外に由来する。16億5000万ドルが非暗号資産手数料、7億5600万ドルが USDC 利息、1億ドルが HIP-4 によるものである。
現在の価格にはどのような期待が織り込まれているか
当社は20%の割引率で2029年の収入を現在価値に換算する(以前のレポートで用いた割引率と同一)。2029年の49億1000万ドルの収入の現在価値は28億4000万ドルとなる。その後、異なる売上高倍数を代入し、2029年に残存する HYPE トークン数で割る。
計算方法:総供給9億9880万枚から、アシスタンス・ファンドがすでに保有する4830万枚を差し引き、さらに2027〜2029年に収入の99%で買い戻し・焼却されるトークンを差し引く。買い戻し価格は現在の77ドルから、当該シナリオにおける2029年の目標価格まで段階的に上昇する。倍数が高いほど買い戻しで消費されるトークンは少なくなる。25倍では約8700万枚、30倍では7600万枚、40倍では6100万枚が焼却される。
暗号資産取引高が現在の3倍になる前提で、異なる収入倍数・異なる市場シェアに対応する HYPE の目標価格
試算例を挙げる:3%の市場シェア、40倍の倍数。2029年:暗号資産取引収入22億ドル(5.94兆×0.037%)、非暗号資産取引収入16億8000万ドル(934兆ドル市場の3%=28兆×0.006%)、USDC 利息9億3500万ドル(289億ドルの準備金×3.6%×90%)、HIP-4 の寄与1億ドル、合計49億1000万ドル。20%で3年間割り引くと(1.2×1.2×1.2=1.728で割る)、現在価値は28億4000万ドルとなる。40倍の評価は完全希薄化時価総額1138億ドルに相当する。この倍数の下では2029年までに約6100万枚の HYPE が買い戻し・焼却され、残存は8億9000万枚となり、単価は128ドルとなる。
HYPE の価格試算:暗号資産取引高が現在の3倍に達し、40倍の収入評価の下では、グローバル市場シェアをわずか0.5%獲得するだけで81ドルの価格を支えられる。緑色の領域は10月27日の現値より高いことを示す。
この前提を覚えておく必要がある。非暗号資産取引高の大部分は最後まで成長モードに留まる。
別の角度から理解する:現在の77ドルの価格は、次のような価格期待に対応している。0.5%のシェアなら38倍の売上高倍数、3%のシェアなら23倍、5%のシェアなら18倍、10%のシェアなら約10倍で足りる。CME の PER は25倍、ICE は23倍である。つまり、市場の現在の価格は、伝統的取引所の評価水準でおおむね2%〜3%の市場シェアに相当する。あるいは、より低いシェアに成長プレミアムを上乗せしたものだ。
25倍の収入評価を前提に、異なるグローバル市場シェア・異なる暗号資産取引高の倍数に対応する HYPE 価格を比較したもの。暗号資産取引高が3倍になることと市場シェアの向上はいずれも価格を押し上げる。
市場シェアの重みは今や暗号資産サイクルを上回っている。25倍の倍数では、暗号資産取引高が3倍になると HYPE の単価は約30ドル上昇する。シェアが1%から5%に上がれば単価は約48ドル上昇する。仮に暗号資産取引高が変わらなくても、77ドルの価格を支えるには25倍の倍数で5%の市場シェアを獲得する必要がある。
市場のロジックが変わった、評価フレームワークも変える必要がある
3月に HYPE の価格が37ドルだったとき、当社は2028年売上高の20倍の倍数で4つのシナリオ評価を行った。悲観シナリオ60ドル(日平均1.74兆ドル市場の0.01%)、ベースシナリオ72ドル(0.10%)、楽観シナリオ124ドル(0.50%)、極端な楽観シナリオ190ドル(1.00%)で、2028年の売上高14億〜46億ドルに対応する。7カ月後、HIP-3の年間取引高は8700億ドルに達し、当時のベースシナリオの0.10%シェアに対応する6400億ドルをすでに上回り、楽観目標までの道のりをおよそ4分の1進んだことになる。以下は3月のモデルと現在のモデルのデータ比較である。
3月と現在の4つのシナリオにおける HYPE 評価の比較:トークン総量はほぼ3倍になったが、楽観シナリオの目標価格は124ドルから165ドルに引き上げられた。
初期バージョンを踏襲し、流通トークンのみで評価すると、ベースシナリオの単価は約280ドルとなり、98ドルではない。今回引き下げたもう一つの核心パラメータは手数料である。3月は HIP-3 がプロトコルに0.05%を分配すると仮定していた(成長モード開始前の料率)が、今回のモデルでは0.006%を取っている。悲観シナリオの評価が3月を下回るのは、流通時価総額のみを見るのではなく完全希薄化総供給(FDV)に切り替えたためである。
評価に影響する変数
上振れ要因
- 完全希薄化総量ではなく実際の流通トークンで評価すれば、単価はほぼ倍になる。完全希薄化総量には、将来永遠に流通しない可能性のあるロック解除トークンが含まれる。
- 割引率を20%から15%に引き下げると、30倍の倍数でベースシナリオの評価は98ドルから111ドルに上がる。
- Hyperliquid は現在、年間取引高の0.18%を USDC 証拠金として留保しているが、CME はわずか0.01%である。伝統的金融のトレーダーも暗号資産トレーダーと同じように資金をプラットフォームに置く習慣を持てば、USDC 利息収入は当社の仮定を大きく上回るだろう。
- オプションのプレミアム1ドルごとに、10〜20ドルの無期限先物ヘッジ取引高を呼び込める。ネイティブ・オプションはまだ HyperCore に上場していないため、モデルにはこの増分を計上していない。
当社の供給仮定:2029年までにすべての解放待ちトークンが流通する。現在の流通3億200万枚、コアコントリビューターが保有する2億3800万枚、Hyperliquid が表示する将来解放予定の4億1000万枚を合算し、そこから買い戻し焼却分(30倍で約7600万枚)を差し引く。2029年までに解放待ちトークンの半分だけが流通する場合、供給は約6億8300万枚となり、30倍の倍数でベース価格は98ドルから125ドルに上昇する。これらのトークンが全く流通しない場合、供給は4億9300万枚で単価は173ドルとなる。
30倍の収入評価の下で、2029年の異なるロック解除流通量に対応する HYPE 価格を試算したもの。流通が少ないほどトークンの評価は高くなり、解放待ちトークンの半分だけが市場に流入する場合、ベース価格は98ドルから125ドルに上昇する。
下振れリスク要因
- 非暗号資産業務の手数料が CME の0.0004%まで下がれば、30倍の倍数でベースシナリオの評価は98ドルから66ドルに落ちる。すべての銘柄がずっと成長モードに留まれば85ドルとなる。暗号資産無期限先物の手数料も競争圧力にさらされている。Lighter はかつてゼロ手数料を打ち出し、バイナンスの伝統的金融無期限先物の規模は Hyperliquid の6倍であり、競争は非常に激しい。
- ベースシナリオの前提は、2029年の暗号資産取引高と手数料収入が平均で現在の3倍に達し、30倍の倍数で98ドルに対応するというもの。もし現在の1.5倍にとどまれば30倍でベース価格は71ドル、取引高が横ばいなら62ドルとなる。
- USDC 利息は2029年の9億3500万ドルの収入源であり、米国の金利が極めて重要になる。金利が100ベーシスポイント下がるごとに、この部分の収入は4分の1以上縮小する。金利2.6%のとき、ベース価格は92ドルとなる。
本稿のすべての試算はインタラクティブな評価モデル HYPE valuation model に基づいており、すべてのパラメータは各自で変更できる。


