a16zが暴くAIブームの真実:上位1%がAIの物語全体を支えている

AI投資と収益の「熱い」マクロデータと、個人が感じる「冷たい」実感の乖離を、a16zの報告書を基に分析。成長を牽引するのはごく一部の大手であり、利益は層ごとに上位に集中する「べき乗則」が働いている。

  • マクロの熱気:米国株の利益成長の約4分の3はハイテク企業が占め、AIの収益・計算能力・設備投資は過去最高を更新。市場の上昇は投機ではなく利益に裏付けられている。
  • 個人の冷感:AIの恩恵を実感する人は少ない。これは平均値に騙され、上位層の活況を見落としているため。
  • ユーザー層の集中:トークン需要の伸びはほぼ上位1%のユーザーが牽引。企業でも「フロンティア企業(上位10%)」と「標準企業」の使用量の差は、年初の2.6倍から8.3倍に拡大し、AIを業務プロセスに組み込むか否かで差がついている。
  • 企業層の活用深度:「AIを使っている」と答える企業は約7割だが、効果を継続的に測定しているのは約2%。具体的なリターンを示せるのはMicrosoft、Metaなどの大企業に限られる。
  • ソフトウェア層の評価:市場は「SaaS終焉」を懸念するが、実際は成長企業を選別。インフラ系ソフトのバリュエーションは横断系ソフトの3倍以上と差が開き、市場は成長と参入障壁に対して対価を支払っている。
  • ベンチャーキャピタル層の格差:トップ10%のファンドのIRRは約40%だが、中央値は約-3%と過去最大の格差。多くのファンドはキャッシュ(DPI)を投資家に還元できていない。
  • スタートアップ層の二極化:若いAIスタートアップは年率500%超の成長を見せる一方、約半数はキャッシュランデュエイが2年未満と苦戦。
  • 結論:AIの恩恵は「前1%」に偏在。ニュースを読む際は「それは全体の平均か、上位層の数字か」「使っているのか、稼いでいるのか」「帳簿上の評価か、手元の現金か」という3つの尺度で距離感を測るべき。
要約

著者:Block Analytics Ltd X Merkle 3s Capital

本記事の内容は、a16z『State of Markets II』(2026年9月、David George)を参照している。

米国株式の過去1年間の利益成長のうち、約4分の3はテクノロジー企業によるものだ。AIの収益、計算能力、設備投資は、ほぼ四半期ごとに記録を更新している。しかし、周囲の人に「AIが自分の給料、ビジネス、口座に何をもたらしたか」と尋ねても、大半の人は答えられない。マクロデータはこれほど熱いのに、個人の実感はこれほど冷たい。この二つがどうして同時に成立し得るのか。

同じレポート、二つの世界

まず熱い側面から見よう。a16zのこの90ページのレポートは、冒頭でテクノロジーを「万物のサイクル」と呼ぶ。つまり、テクノロジーはもはや一つの業界ではなく、経済全体のエンジンだということだ。レポートは、AIインフラの建設が米国の新規建設投資とブルーカラー雇用の増加の大部分に寄与していると指摘する。

この建設の資金を出す側も集中している。レポートによれば、数社のハイパースケーラー(超大手クラウド事業者)が利益で設備投資の大部分を負担しており、そのためフリーキャッシュフローは大幅に落ち込み、2028年前後まで回復しない見込みだ。現金が足りない分は、債券市場が補っている。AIインフラの請求書は、主に少数の巨大企業にのしかかっている。

利益データも同様に熱い。S&P 500は、米国で時価総額が最も大きい上場企業500社で構成される株価指数だ。このレポートの計算によれば、2026年8月時点で、S&P 500の利益成長の約4分の3はテクノロジー企業によるもので、テクノロジー企業の利益増加率は非テクノロジー企業の約4倍に達する。

レポートはさらに、この上昇はバブルではないと強調する。テクノロジー株のバリュエーション倍率は5年平均より約2割低く、株価上昇は主に利益に支えられている。価格は利益に押し上げられたのであり、センチメントに吹き上げられたのではない。

個人投資家もこの熱狂に押し寄せた。レポート13ページによれば、個人投資家は依然として市場を動かす重要な力であり、レバレッジと追い上げがボラティリティを増幅している。かつての「ミーム株」騒動と異なり、今回は個人投資家がコンセンサスのあるテーマを買っている。つまり、誰もが同じAIの物語を買っているのだ。

次に冷たい側面を見よう。レポート27ページのタイトルは「需要は旺盛だが、まだ早い」。S&P 500企業の約7割が「AIを使っている」と答える。約3割が定量化できる影響を報告できる。効果指標を継続的に追跡しているのは約2%にすぎない。

レポートはこの数字に対する評価を一言だけ述べている。採用は広いが、浅い。熱い側面と冷たい側面は、同じレポート、同じ執筆者、同じ月のものだ。両者は矛盾しない。矛盾は、私たちがそれらを平均値で読もうとする習慣の中にだけある。

平均値は人を欺く。ある部屋に10人がいて、1人が年収1,000万元、残りの9人が年収10万元だとしよう。この部屋の平均年収は109万元になる。この数字は本当だが、部屋にいる誰一人として描写できていない。

AIは今まさにそういう部屋だ。レポート32ページは率直に書いている。目を引く総量データは、水面下の実態を覆い隠している。成長はごく少数のヘビーユーザーによって駆動されている。私はこのページを読んだとき、前の30ページを読み返した。

視点を変えて読み直すと、レポートのどの章も同じことを語っている。AI時代の金と恩恵は、どの層でもまず上位に流れる。 ユーザー層もそう、企業層もそう、ソフトウェア、ベンチャーキャピタル、起業の層もそうだ。以下、一層ずつ見ていこう。

AIは熱いが、熱いのは少数の家の中だけだ。

1%の人々が、AIの大部分を使い尽くしている

まず一つの言葉を説明しよう。トークンとは、AIモデルがテキストを処理する際の計量単位で、大まかに言えばAIが読み書きする「文字数」と理解できる。人や企業が使うトークンが多いほど、AIに多くの仕事をさせていることになる。だからトークン使用量は、AIの実際の利用強度を測る良い指標だ。

レポートは32ページで、全文で最も重要な一文を提示している。トークン需要の成長は、ほぼすべて上位1%のユーザーによって駆動されている。この人々は「可能性の端にようやく触れ始めたばかり」だ。注意してほしい。レポートが言っているのは上位半分でも、上位10%でもなく、上位1%だ。

企業レベルのデータは、この一文を一枚の図に描き出している。レポートはある企業データを引用し、企業をトークン使用量で並べている(OpenAIの企業利用データ基準、2025年4月〜2026年6月)。上位10%の企業を「フロンティア企業」、ちょうど真ん中の10%の企業を「典型企業」と呼ぶ。基準は2025年4月の典型企業の使用量で、これを1倍とする。

2026年6月までに、フロンティア企業の出力トークンは約17倍に増えたが、典型企業は約2倍にとどまる。両者の差は8.3倍で、年初にはこの差はまだ2.6倍だった。

この差は最初からこれほど大きかったわけではない。2025年10月以前は、二つの線はほぼ同じ動きをしていた。10月以降、フロンティア企業の曲線は急激に上昇し、典型企業はほぼ横ばいになった。レポートがこのページにつけたタイトルは「ヘビーユーザーが他を引き離しつつある」。

業界別に見ても、形は同じだ。情報業のフロンティア企業は32.5倍に増えたが、典型企業は2.8倍で、差は11.7倍。金融・保険業は両者の差が6.7倍、専門・テクノロジーサービス業は7.7倍。例外の業界は一つもなく、どの業界の内部でも分化が起きている。

使用量だけでなく、使い方も分化している。プラグインやスキル系ツールは、AIを社内システムにつなぎ、決まったフローで繰り返し仕事をさせる拡張機能だ。フロンティア企業では、この二種類のツールの週間アクティブ比率はそれぞれ21%と19%。典型企業では9%と3%にすぎない。フロンティア企業は単に多く使うだけでなく、AIを業務フローに組み込んでいる。

家庭レベルのデータはさらに冷たい。2026年半ば、米国でAIに課金している家庭は約2.2%にすぎない。課金家庭の平均月額支出は約31ドル。言い換えれば、米国の100世帯のうち約98世帯はまだAIに一銭も払っていない。レポートの消費者側への判断は「すべてはまだ始まったばかり」だ。

では、トークン需要はなぜ放物線を描くように伸び続けられるのか。答えはエージェントだ。エージェントとは、自らタスクを分解し、モデルを連続的に呼び出して仕事を完遂するAIプログラムだ。モデルが安くなるほどエージェントは割に合うようになり、トークン使用量は倍々で増える。

レポートはこの現象をジェボンズのパラドックスと呼ぶ。あるものが安く、効率的になるほど、人々の総使用量はかえって増える。ただし一言補足したい。この安価な知能を大量に使いこなしているのは、やはり主に同じヘビーユーザーたちだ。知能は安くなっているが、安い知能を使いこなせる人は同じ割合では増えていない。

このヘビーユーザーたちの影響は、すでに彼ら自身を超えている。レポートは、需要の急増が計算能力の価格を押し上げていると指摘する。レポートが引用する賃貸データによれば、使用4〜5年の旧型GPUでも、賃料は1年前と比べてほとんど下がっていない。言い換えれば、上位1%の使用量が市場全体の計算能力の価格を決めているのだ。

この章には二種類の量が登場した。企業のトークン使用量と、家庭の課金比率だ。両者は基準が異なり、足し合わせることも、相互に換算することもできない。しかし形は同じだ。少数の人が曲線の最も急な部分に立ち、大多数の人はまだ出発点付近にいる。

私自身の観察も同じだ。周囲で「AIを使っている」と言う人は多い。本当にAIに毎日自分のフローを回させている人は、片手で数えられるほどだ。

大多数の人はAIを電卓のように使い、少数の人はAIをチームを雇ったかのように使う。

企業層:「使っている」と言うことと、儲かっていることは別物

27ページの三つの数字に戻ろう。それらを漏斗状に並べると、よりはっきり見える。約7割の企業が「AIを使っている」と言う。約3割が定量化できる影響を報告できる。効果指標を継続的に追跡しているのは約2%だけだ。

一段下がるごとに、企業数は大きく減る。「効果指標を継続的に追跡する」とは、企業がAIによる収益・コスト・効率の変化を定期的に測定し、それを続けることを意味する。この一歩がなければ、「AIを使っている」は単なる言い分にすぎず、帳簿には載らない。

レポート28ページは丸々1ページを使ってリターンの事例を列挙し、タイトルは「AIリターンの逸話的データは至るところにある」。これらの事例はすべて企業の決算発表や公の発言から来ている(企業決算基準、2026年第2四半期)。最も代表的な四つを抜き出そう。

  1. マイクロソフトのMicrosoft 365 Copilotの有料シート数は3,000万を超えた。
  2. ServiceNowのAI年間契約額は2026年第2四半期に10億ドルを突破し、エージェント導入数は9カ月で9倍に増えた。
  3. Metaの広告モデルはFacebook上の会話量を15%向上させ、自動配信ツールは13%の増分購入をもたらした。
  4. アマゾンとウォルマートはともに、AIショッピングアシスタントを使う顧客は1回の注文で約40%多く使うと述べた。

これらの数字はすべて本当だ。しかし共通点が一つある。すべて大企業から来ている。リストに並ぶのはマイクロソフト、Meta、アマゾン、ウォルマート、ServiceNowだ。レポートが提示できるリターン事例は、ほぼすべて上位の大企業から来ている。中位の企業がAIでいくら儲けたか、レポートには答えが見つからない。

では、他の企業を阻んでいるのは金だろうか。レポートはそうではないと考える。コストがAI採用を制限していると答えた企業は約5分の1にすぎない(ある国際コンサルティング会社の調査基準)。クラウドコンピューティングが普及して2年目の時点で、企業IT予算の約4%を占めていた。今日のAI支出の割合はまだこの水準を下回る。

レポートはここから結論を導く。企業のAI支出にはまだ大きな成長余地がある。私たちはこの方向性に同意する。しかし金がボトルネックでないなら、ボトルネックは別のところにある。私たちの判断は、ボトルネックは「使いこなせるかどうか」にある。

フロンティア企業はAIをフローに組み込み、結果を定量化している。典型企業はまだ、従業員に各自で試させる段階にとどまっている。予算は一夜で承認できるが、使い方は一つのフローずつ変えていくしかない。これこそが、漏斗が下に行くほど狭くなる理由だ。

大企業はこの点で生まれながらに有利だ。既存のデータがあり、フローを変えられるエンジニアがいて、十分に大きな事業量もある。同じようにコンバージョン率を5%上げても、大規模プラットフォームなら相当な収入になる。小さな企業なら、AIの請求書すら賄えないかもしれない。

雇用データも同じ方向を指している。レポート31ページのタイトルは「AI強度が採用を増やす、特にソフトウェアエンジニア」。AI使用強度の高い企業では、初級ポジションの割合が約1ポイント上昇する(採用・企業支出データ基準)。AI使用強度の低い企業では、初級ポジションの割合が約0.5ポイント低下する。

この結果は「AIが仕事を奪う」という流行の言説とは逆だ。しかしこれもまた一つの分化だ。深く使う企業は拡大し、浅く使う企業は縮小している。AIは雇用に平均的に影響したのではなく、まず企業と企業の距離を広げたのだ。

一般の読者にとって、この章には実用的な結論が一つある。次に「某社のAI収益が記録更新」というニュースを見たら、まずそれが漏斗の底の約2%かどうかを確認しよう。大多数の企業にとって、AIは今日まだコスト欄に書かれており、収益欄には書かれていない。

AIを使っていると言う企業は多いが、帳簿を出せる企業は少ない。

ソフトウェア層:同じソフトウェアでも、バリュエーションは3倍違う

2026年の年明け、米国株式のソフトウェアセクターは一斉売りに見舞われ、市場はそれを「SaaSの終末」と呼んだ。SaaSとは、月額または年額でサブスクリプション料金を徴収するクラウドソフトウェアだ。当時の懸念は単純だった。AIがこれらのソフトウェア企業の飯の種を食い尽くすのではないか、と。

レポートがこの章につけた名前は「終末というより、『証明してみせろ』」。つまり、市場はソフトウェアを見捨てたわけではない。市場は各ソフトウェア企業に、AI時代でも依然として有用である証拠を出すよう要求しているだけだ。

株価が最初に分化を示した。2026年1月から8月にかけて、サイバーセキュリティ株は85〜90%上昇し、水平型SaaS株は28〜30%下落した(S&P Capital IQ基準、2026年8月末時点)。水平型ソフトウェアとは、あらゆる業界で使える汎用ツール、例えばオフィスコラボレーションソフトなどだ。垂直型ソフトウェアは、特定の業界向けに深くカスタマイズされたソフトウェアだ。レポートの防御力ランキングは、サイバーセキュリティが垂直型ソフトウェアより強く、垂直型ソフトウェアが水平型ソフトウェアより強い。

バリュエーションの分化はさらに顕著だ。ここで一つの指標を使う必要がある。EV/売上倍率だ。これは企業総価値を売上で割った結果で、市場が1ドルの売上に対してどれだけ払う意思があるかを表す。倍率が高いほど、市場はその企業の将来をより高く評価している。

レポート59ページはソフトウェアを5分類し、それぞれのバリュエーション倍率を列挙している(ある大手資産運用会社の基準、企業価値/過去12カ月売上の倍率中央値、2026年上半期)。クラウド・データ・AIインフラソフトウェアは9.1倍。セキュリティ・アイデンティティソフトウェアは6.8倍。垂直型ソフトウェアは4.6倍、消費者・取引プラットフォームは4.0倍。水平型ソフトウェアはわずか2.7倍だ。

最高と最低の間には3倍以上の差がある。それぞれの過去のピークと比べると、差はさらに大きい。インフラソフトウェアのピークは17.9倍で、現在は約半分まで落ちている。水平型ソフトウェアのピークは12.3倍で、現在は約8割落ちている。同じ下落局面で、あるソフトウェアは単に冷えただけだが、あるソフトウェアは再評価された。

倍率を決める主な要因は成長だ。レポート第5節の図によれば、売上成長率20〜40%のソフトウェア企業のフォワード倍率は9〜13倍。成長率10〜20%の企業のフォワード倍率はわずか4〜5倍だ。フォワード倍率は今後12カ月の予想売上を使うもので、上記の過去12カ月売上を使う倍率とは基準が異なる。二つの数字は直接比較できないが、方向は一致している。成長が速いほど、倍率は高い。

問題は、高成長のソフトウェア企業がますます少なくなっていることだ。上場ソフトウェア企業の約4分の3はすでに黒字だが、成長率が20%を超えるのは約3割にすぎない。業界全体が成長を利益と交換した。レポートの言い方では、もしあなたが依然として高成長企業なら、あなたの倍率は「依然としてかなり良い」。

レポートはさらに、ソフトウェア企業のファンダメンタルズは一貫して安定していると強調する。売上成長と経営効率はほとんど悪化していない。だから市場は「ソフトウェア」という業界を罰しているのではない。市場が罰しているのは、成長もなく、堀(モート)もないソフトウェアだ。堀とは、競合他社が顧客を奪いにくくする長期的な優位性を指す。

レポートはこの節の最後に、開かれた問いを一つ残している。ソフトウェアは紙媒体のように新技術に淘汰されるのか。それともAIは満ち潮のように、すべてのソフトウェア企業のリターン率を押し上げるのか。レポートは結論を出していない。私たちの理解は、二つの結末が同時に起こり得るが、それは異なる企業に降りかかる、というものだ。

ソフトウェア層の上位は、特定の数社ではなく、特定の数種類だ。一つはAIインフラとともに成長するソフトウェア。もう一つは、AIが強くなるほど必要とされるセキュリティソフトウェアだ。あるソフトウェア企業が「AIがなぜ自分を強くするのか」を説明できなければ、市場はおそらく水平型ソフトウェアの倍率でそれを評価するだろう。

市場はもはや「ソフトウェア」という二文字に金を払わず、成長にだけ金を払う。

ベンチャーキャピタル層:見栄えの良いリターンは、上位10%が引き上げている

まず一つの言葉を説明しよう。べき乗則だ。べき乗則とは、極端に集中した分布で、ごく少数の個体が結果の大部分をさらっていくことを指す。ベンチャーキャピタル業界は常にべき乗則を信じてきた。1本のファンドが30社に投資し、そのうち1〜2社だけで元本と利益のすべてを回収することが多い。

レポート68ページのタイトルは「べき乗則は健在、そしてさらに強まっている」。この一文は企業側とファンド側の両方で成立する。まず企業側から見よう。

最も価値の高い未上場企業はかつてないほど大きい。彼らは上場がますます遅くなり、レポートの言い方では「小型株を飛ばして、直接巨大企業になる」。価値創造はますますプライマリー市場で起きている。これらの企業が上場するとき、一般投資家が参加できる上昇分はすでに短くなっている。

セカンダリー市場も同じ物語を語っている。セカンダリー市場とは、投資家同士が未上場企業の株式やファンド持分を譲渡する市場だ。レポートは、この市場にはほとんどディスカウントがなく、最高の企業は依然としてプレミアムで取引されていると指摘する。金が足りないのではなく、すべて同じ数社の名前に殺到しているのだ。

ファンド側の分化はさらに大きい。ここで二つの指標を使う必要がある。IRRは内部収益率で、投資期間中のあらゆる現金の出入りを年率換算したリターンに換算するものだ。ファンドの「ビンテージ」とは、ファンドが投資を開始した年を指す。

レポートが引用するファンドデータによれば、同じ2024年ビンテージのベンチャーファンドでも、互いの差は極めて大きい(Cartaのファンドデータ基準)。

  1. 上位10%のファンドのネットIRRは約40%。
  2. 中央値のファンドのネットIRRは約-3%で、わずかにゼロを下回る。
  3. 下位25%のファンドのネットIRRは約-15%。

レポート71ページのタイトルは、上位10%のファンドと残りのファンドの差は「かつてないほど大きい」。一方は年率約4割のリターン、もう一方は中央値でわずかな赤字。これらを足して平均を取っても、その数字は現実のどのファンドも表していない。

二つ目の指標はより直接的だ。DPIは投資家に返還された現金を投入元本で割ったもので、実際に手にした金を測る。2021年以降に組成されたファンドのDPI中央値は約0だ。つまり、このファンド群の半分以上は、まだ出資者に一銭の現金も返していない。

IRRは帳簿上の評価額を含み、DPIは手にした現金だけを数える。帳簿上はプラスもマイナスもあるが、現金では中央値がゼロだ。ベンチャーキャピタル業界の見栄えの良いリターンは、大部分がまだ帳簿上にあり、しかも主に上位ファンドに属している。

この話は一般の人から遠くない。ベンチャーファンドの出資者の多くは、年金基金、大学基金、保険会社だ。帳簿上のリターンが現金になるには、企業の上場か買収が必要だ。前述の通り、最高の企業は上場がますます遅くなっているので、この現金もますます遅くやってくる。

もう一点説明が必要だ。a16z自体が上位ベンチャーファンドの一つだ。このレポートは、曲線の最も高いところに立つ機関によって書かれている。これはデータが間違っていることを意味せず、私たちが読むときに著者の立ち位置を覚えておくべきだということだ。

この章の数字はファンドのリターンだ。それは前のトークン使用量やバリュエーション倍率とは異なる量だ。しかしその形はやはり同じだ。上位が平均を引き上げ、中央値は平均から遠く離れている。

ベンチャーキャピタルの見栄えの良い平均は、上位10%のファンドが支えている。

起業層:新会社は飛ぶように走り、古い会社は2年目で息切れする

まず背景を説明しよう。ゼロ金利時代とは、米国が長期にわたって金利をゼロ近くに抑えていた数年間を指し、当時は資金調達が非常に安かった。ゼロ金利が終わると、スタートアップも上場企業と同じように、成長を利益と交換し始めた。

しかしレポート73ページは一つの例外を指摘する。最近資金調達に成功した企業の成長率は、依然としてゼロ金利のピーク期と同水準か、それ以上に速い。理由は単純だ。高成長がなければ、次のラウンドの資金調達ができないからだ。

成長は最も若い企業に集中している。レポートが引用する決済データ(Stripeの決済データ基準)によれば、設立1年未満のSaaS企業の売上成長率は500%以上で、ピーク時には一時600%を超えた。設立1年以上の企業の成長率は約30%から約20%に落ち、その後約20〜25%に回復した。SaaSとは、月額または年額で課金するサブスクリプション型ソフトウェアを指す。

レポートはこのデータを使って「SaaSの終末」に反論する。ソフトウェアの売上は新しい年に入ってむしろ加速した。この判断は間違っていない。しかし同じ図は、最も高い成長率が設立したばかりの企業に属することも示している。ある企業が1年目を乗り切ると、成長曲線はしばしば急坂から緩やかな坂に変わる。

レポート75ページは新世代のユニコーンをこう形容する。より大きく、より速く、より若い。ユニコーンとは、評価額10億ドル以上の未上場企業を指す。新世代のAI企業は、より短い時間、より少ない人数で、より大きな売上を達成している。

既存ユニコーンの置かれた状況はまったく異なる。レポートが引用するデータ(シリコンバレーバンク基準、2026年の米国ユニコーン)によれば、約4割のユニコーンの売上成長率は0〜20%の間にある。約1割半はマイナス成長だ。過半数の企業の現金ランウェイは2年未満だ。現金ランウェイとは、現在の資金燃焼ペースで、帳簿上の現金がどれだけ持つかを指す。

ランウェイが2年未満ということは、これらの企業はまもなく再び資金調達をしなければならないことを意味する。1ラウンドの資金調達は、開始から入金まで通常数カ月かかる。成長率が0〜20%しかなければ、投資家が見たい成長ストーリーを提示するのは難しい。

資金調達も少数の企業に集中している。レポート74ページはこのサイクルを一言でまとめている。より少ないファンドが、より大きな小切手で、より少ない企業に投資する。これらの企業はますますシリコンバレーに集中し、しかもほぼすべてAI関連だ。

レポートは一つの細部も指摘している。金が流れる業界は変化している。企業向けソフトウェアや消費者向けアプリに加えて、法律・会計などのサービス業、半導体・電力・防衛などの重資産産業もベンチャー資金を受け取り始めた。しかしトラックが広がっても、集中の方向は変わっていない。

だから、起業層の分化はAI企業と非AI企業の間だけでなく、新会社と古い会社の間でも起きている。新会社は上位で飛び立つ。古いユニコーンの中には、かなりの部分が時間との競争をしている。

ユニコーンには二種類ある。飛び立つものと、現金が残り何カ月かを数えているものだ。

次にAIの良いニュースを見たら、まず一言問おう

五つの層を並べて見よう。企業層では、フロンティア企業のトークン産出は典型企業の8.3倍。企業層では、約7割がAIを使い、約2%が効果を継続的に追跡している。

ソフトウェア層では、インフラソフトウェアのバリュエーション倍率は水平型ソフトウェアの3倍以上。ベンチャーキャピタル層では、上位ファンドと中央値ファンドのリターン差が記録を更新した。起業層では、新会社の成長率は500%以上、古いユニコーンの過半数は現金ランウェイが2年未満。五つの層はすべて同じ形を語っている。

トークン使用量、バリュエーション倍率、ファンドリターンは、まったく異なる三種類の量だ。私たちはそれらを足し合わせず、相互に換算もしない。基準は異なるが、形は同じだ。どの層でも、少数の上位が全体を支えている。

上位集中は単なる初期現象にすぎないと言う人もいるだろう。レポート自身もそう書いている。他の人々は最終的に追いつくか、置き去りにされるかだ。私たちはこの可能性に同意する。インターネットもクラウドコンピューティングも、上位から大衆へ拡散する道を歩んできた。

しかし「最終的に」には日付がない。他の人々が追いつく前に、ある数字が上位を指すのか大多数を指すのかで、結論はまったく変わる。だから私たちは、べき乗則はチャンスのリストではなく、物差しだと考える。それは何を買うべきかを教えず、良いニュースがあなたからどれだけ遠いかを測る手助けをするだけだ。

次にAIの良いニュースを見たら、まずこの物差しで三つの問いを立てよう。

  1. この数字は上位を指すのか、中央値を指すのか。上位1%のユーザー、上位10%のファンドは、大多数の人を代表しない。
  2. この数字は「使っている」を指すのか、「儲かっている」を指すのか。約7割の企業がAIを使っているが、帳簿を出せるのは約2%だけだ。
  3. この数字は帳簿を指すのか、手にした現金を指すのか。ファンドの帳簿上のリターンは見栄えが良いが、DPI中央値は約0だ。

この三つの問いは専門知識を一切必要としない。例えば、あるニュースが「AIが企業の効率を30%向上させた」と報じたとしよう。第一の問い、それはフロンティア企業を統計したのか、すべての企業を統計したのか。第二の問い、それは従業員の利用時間を測ったのか、企業が多く儲けた金を測ったのか。第三の問い、その金はすでに損益計算書に入ったのか、それとも予測なのか。

私たちは売買の結論を一切出さない。ある数字がこの三つの問いに対してすべて「上位」「使っている」「帳簿」と答えるなら、それは少数の人についての良いニュースだ。答えが「中央値」「儲かっている」「現金」なら、それは本当に大多数の人に関係する。

AIの良いニュースは、まず一言問おう。それは上位1%の話か、それともあなたの話か。

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著者:Merkle3s Capital

本記事はPANews入駐コラムニストの見解であり、PANewsの立場を代表するものではなく、法的責任を負いません。

記事及び見解は投資助言を構成しません

画像出典:Merkle3s Capital。権利侵害がある場合は著者へ削除をご連絡ください。

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