執筆:@aliomerhorzum
翻訳:AididiaoJP、Foresight News
編集注:Pearlは「有用なプルーフ・オブ・ワーク」(Proof-of-Useful-Work、PoUW)に基づくL1パブリックチェーンプロジェクトで、プリンストン大学数学博士、コロンビア大学計算複雑性理論教授のOmri Weinstein氏が創設した。その核心的な発想は、マイナーにGPUで行列乗算——大規模言語モデル推論の基盤となる演算——を従来のハッシュ計算の代わりに実行させることで、マイニングの計算力をAI推論とブロックチェーンネットワークのセキュリティの両方に同時に役立てようとするものだ。Pearlのメインネットは2026年4月にローンチし、トークンPRLの最大供給量は21億枚で、ビットコインの4年ごとの半減メカニズムに代えて漸進的に逓減する発行カーブを採用している。プロジェクトは完全なフェアローンチを主張し、プレマインなし、創業者への割り当てなし、VCラウンドなしとしている。2026年10月時点で、PRLの流通比率は約16%、FDVは約28億〜40億ドル。PearlはすでにTogether AIと提携し、25%超の割引を提供するGemma推論インターフェースを発表しており、NVIDIAのInceptionアクセラレータープログラムにも参加している。その核心的な論争点は、チェーン上のコンセンサスプロトコルが、マイナーが計算しているのが実際のAI推論タスクなのかランダム行列なのかを区別できないという点にあり、この問題はすでに学術界の実証研究を引き起こしている。
Pearlに関する最も一般的な誤解の一つは、その「有用なプルーフ・オブ・ワーク」メカニズムが、すべてのマイナーが有用なAI推論を行っていることを保証できるという考え方だ。実際はそうではない。そして私は、そうあるべきでもないと考えている。
1枚のGPUが実際の推論リクエストのために行列乗算を行い、もう1枚のGPUがマイニングのためにランダム行列乗算を行う。Pearlにとって、両者が生み出すワーク量は同じように有効だ。プロトコルは、誰かがこれらの計算に対して対価を支払ったかどうかを知らない。これは欠陥ではなく、設計なのだ。いわゆる有用なマイニングと無用なマイニングの区別は、最終的にはプロトコルではなく経済によって決まるべきだ。
5%のオーバーヘッドとは何を指すのか
Pearlは行列乗算をプルーフ・オブ・ワークの基礎としており、行列乗算はまさに現代のAI推論で最も中核的な演算の一つだ。これにより、同じGPUが顧客のために推論を行いながら、通貨ネットワークの保護に役立つワークを生み出すことができる。しかし、計算を検証可能にすることは無料ではない。
Pearlは、計算証明を構築・検証するために、ランダム化や暗号学的コミットメントなどの操作を追加で実行する必要がある。これらの操作はリソースを消費し、これがマイニングのオーバーヘッドだ。
Pearlがオーバーヘッドを5%未満に抑えることを目標にしていると言うとき、その意味はこうだ。推論計算をマイニング可能なワークに変換する際、単純に推論を行う場合と比べて、追加コストを十分に小さくするということだ。それは、計算の5%だけが有用だという意味ではない。基盤となる行列乗算は、同時に2つの目的に役立つことができる。
しかし、オーバーヘッドが低いからといって、推論GPUが専用マイナーと同じだけのマイニング計算力を生み出せるわけではない。これは別の問題だ。
推論GPUがプロのマイナーに勝てない理由
実際の推論を提供するGPUは、毎秒最大スループットで大規模な行列乗算を行っているわけではないからだ。推論ワークロードの計算特性はまったく異なる。プリフィル段階では、モデルが入力プロンプトを処理し、GPUは大量の行列乗算を実行できる。デコード段階では、モデルがトークンを1つずつ生成し、性能は純粋な計算力ではなくメモリ帯域幅に制限されることが多い。
専用マイナーはGPUに行列乗算を絶え間なく実行させることができる。推論サービス事業者にはそれができない。顧客にサービスを提供し、レイテンシ要件を満たす必要があり、しかも多くのワークロードはGPUの計算力をまったく使い切れないからだ。
したがって、2つの問題を分けて考える必要がある。行列乗算の証明を生成することで、推論はどれだけ遅くなるのか。そして、1枚の推論GPUは実際にどれだけのマイニング可能な行列乗算を完了できるのか。この2つは同じではない。
オーバーヘッドを下げれば、推論とマイニングを同時に行うことがより魅力的になる。GPU利用率、バッチ処理、ワークロードスケジューリングを向上させれば、サービス事業者が生み出せるマイニング可能な計算量が増える。どちらも重要だ。そして私は、後者に最大のチャンスが隠れていると考えている。
純粋なマイナーが最終的に劣勢に立つ理由
ハードウェア水準が同等の2つの運営主体を想像してみよう。1つは専用マイナーで、行列乗算でネットワークを保護することだけでPRLを稼ぐ。もう1つは推論サービス事業者で、顧客がGPUを使うことから収入を得ると同時に、これらのリクエストのうち条件を満たす計算からもPRLを稼ぐ。
両者ともマイニング報酬を争っているが、後者だけが第二の収入源を持っている。この違いが経済計算を変える。
専用マイナーは、ハードウェア、電力、運営コストをマイニング報酬で賄わなければならない。推論サービス事業者は、中核事業でコストの一部または全部を賄うことができ、マイニングは増分収入になる。競争が激化し、マイニングの利益率が圧縮されるにつれて、マイニング報酬だけに依存する運営主体は、同じハードウェアを持ちながら推論収入もある競合相手よりも大きなプレッシャーを受ける。2つの収入源を持つマイナーは生き残り、1つしか持たないマイナーは生き残れない。
これは純粋なマイナーが一夜にして消えることを意味しない。彼らはより安い電力、より高効率なハードウェア、より低い資本コスト、あるいは他の優位性を持っているかもしれない。しかしPearlは、ビットコインがこれまで持ったことのない構造的な経済優位性を生産的計算力のために生み出した。より多くの推論サービス事業者が参加するにつれて、この優位性は絶えず拡大していく。
Pearlは本当にどれだけのグローバル計算力を必要とするのか?
これは私が最も興味深いと思う問題だ。人々は、Pearlがまず世界の大多数のGPUに接続しなければ、有用な推論がネットワークセキュリティの主要な供給源になれないと思いがちだ。私は必ずしもそうではないと考えている。
重要なのは、どれだけのGPUがPearlに接続しているかだけではなく、それらがどれだけの有効なマイニング可能行列乗算スループットを貢献できるかだ。サービス中のGPUは、ワークロード、バッチ処理、利用率の違いによって、専用マイニングマシンよりはるかに低いマイニング計算力しか貢献しないかもしれない。しかしAI推論業界は巨大であり、なお成長している。そのうち十分に大きな部分の生産的計算力が、たとえ利用可能なスループットの一部だけをPearlに提供したとしても、形成されるマイニング計算力は相当なものになり得る。
さらに重要なのは、純粋なマイナーとは異なり、これらの運営主体は必ずしもマイニング報酬に依存して生き残る必要がないということだ。この転換にはプロトコルレベルの禁止は必要なく、生産的計算力がマイニング市場で十分に競争力を持つようになるだけでよい。最終的に、経済法則はプロトコルのルールが決して行う必要のなかったことを成し遂げることができる。
本当のチャンス:推論とマイニングを互いに高め合うものにする
マイニングのオーバーヘッドは下がらなければならず、推論性能は競争力を維持しなければならず、バッチ処理、ルーティング、GPU利用率は向上しなければならない。サービス事業者はまた、既存の事業を損なうことなくPearlに参加できる信頼性の高いインフラを必要とする。
これらは自動的には起こらない。しかし私は、Pearlの最も重要な競争優位性がここに現れると信じている。クラウド事業者をマイナーに変えるよう説得することではなく、マイニングを彼らの既存の推論事業の自然な延長にすることだ。
今起きている規模を考えてみよう。世界は知能を生産するインフラの構築に数兆ドルを費やしており、数百万枚のGPUが可能な限り効率的に推論サービスを提供するために競争することになる。1パーセントポイントの追加収入がすべて重要になる。Pearlがこれらのサービス事業者に提供できるものは、従来のマイニングネットワークが提供できないものだ。すでに対価を得ている計算からマイニング報酬を稼ぐことだ。
より多くの推論サービス事業者が参加するにつれて、ネットワークはより安全になり、マイニング競争はより激しくなり、純粋なマイナーの経済計算はますます成り立ちにくくなる。ある時点で、Pearlを保護するマシンは、その大多数がそもそもPearlをマイニングするために作られたものではなくなるかもしれない。
Pearlは、通貨を保障するために世界がより多くのマシンを建造することを必要としない。世界がすでに建造しているマシンを必要としているのだ。
私たちは無用なマイナーを、もはや必要としなくなるまで必要とする。私は、専用マイニングから経済的に生産的な計算への移行が、プルーフ・オブ・ワークの歴史において最も重要な発展の一つになると信じている。



