著者:OpenAI
翻訳:佳欢、ChainCatcher
10月26日、OpenAIは内部モデルが生成した3件の研究成果を公表した。それぞれ計算機科学、物理学、数学に関わるものだ。
これらの結果はいずれも、関連分野で長く研究されてきた基礎的な問題に触れるものだ。OpenAIはモデルが生成した原稿を「生の研究データ」と呼び、学界に対してさらなる検証、解釈、後続研究を呼びかけている。
計算機科学:ETHは否定されたのか?
OpenAIによると、同社のシステムは指数時間仮説(Exponential Time Hypothesis、ETH)が成立しないことを証明し、この結果は後にLeanで検証された。
ここでのETHは計算機科学における指数時間仮説を指し、イーサリアムのことではない。
ETH(指数時間仮説)は計算機科学における「悲観的な予想」だ。ある種の論理的な難問について、アルゴリズムをどう改良しても、最悪の場合の所要時間は問題規模とともに爆発的に増大し、真の近道は存在しない、というものだ。
したがってETHが否定されることは、「これらのタスクはどこまで速くできるのか」という問いが再び開かれることを意味し、より良いアルゴリズムを探す方向性を与える可能性もある。OpenAIは同時に、そうしたアルゴリズムを見つけ、理論的な進展を実用的な改善に結びつけるには、さらなる多くの研究が必要だと指摘した。
暗号資産業界の読者にとって、より直接的な疑問は「これは既存の暗号システムに影響するのか」という点だ。多くの暗号方式の安全性は、特定の計算問題が解きにくいことに依存している。MITの教授ライアン・ウィリアムズ(Ryan Williams)は以前、OpenAIに関連する影響を確認するよう求めた。彼の伝えるところによれば、OpenAIはすでに確認を行い、この結果は既存の暗号システムが破られたことを意味するものではないと、かなり確信を持って考えているという。
物理学:量子場の理論に「土台」を補う
物理学者は量子場の理論を用いて素粒子の世界を記述し、極めて精密な予測を行うが、その数学的基礎は厳密ではない。
OpenAIによれば、モデルは純粋Yang–Mills理論、量子色力学(QCD、クォークとグルーオンの間の強い力を記述する理論)、および標準模型のゲージ場を含むある種の大統一理論について、厳密な「存在」証明を与えた。簡単に言えば、数十年にわたり使われてきた理論の一式に数学的な土台を補ったということだ。
現時点でLeanによる検証が完了しているのはYang–Millsの部分のみで、QCDの部分については公告で触れられていない。AIが生成した原証明は当面公開されず、ノーベル賞受賞者デイビッド・グロス(David Gross)氏が率いるグループが先に研究し、自ら原稿を執筆するため、外部が現時点で検証することはできない。
数学:波の集束と「針を置く」問題
OpenAIによれば、モデルはすべての次元における局所平滑性予想を証明し、それによってすべての次元における掛谷予想とStein制限予想を解決した。
局所平滑性予想は1991年にSoggeによって提唱され、波が集束するときの振る舞いを研究するものだ。水面の波を直感的な例にできる。いくつかの波紋が同じ位置に向かって伝わり、ある瞬間に非常に高い波頭が重なり合うことがある。しかし、その瞬間の激しさは、そのまま全体の時間平均的な振る舞いを表すものではない。
局所平滑性予想は、こうした瞬間的な極端な振る舞いと時間平均との関係を、精密な数学的評価で記述しようとするものだ。この現象は基礎的な意味を持つため、それを証明することは他の数学的問題にも影響を及ぼす。その中には掛谷予想やStein制限予想も含まれる。
掛谷予想は「針を置く」問題として理解できる。空間の中に同じ長さで太さのない針を多数置き、どの方向にも少なくとも1本の針が向くようにする。これらの針は平行移動でき、互いに重なり合ってもよい。それらが作る集合は、いったいどこまで小さく圧縮できるのか。
ここで「大きさ」を測る鍵となるのは、数学的な次元だ。3次元空間では、掛谷予想はこのような集合が完全な3次元を持たなければならないと主張する。より高次元の空間でも、対応する完全な次元を持たなければならない。次元と体積は異なる概念であり、これらの針が少なくとも何立方メートルを占めるか、と単純に理解することはできない。
これまでに、2次元の局所平滑性(2019年)と3次元の掛谷予想(2025年、王虹とZahl)はそれぞれ証明されていた。今回OpenAIが公表した結果は、局所平滑性予想の証明をすべての次元へと押し進め、それによって関連する予想をすべての次元で結論づけるものだ。
以上の成果についてOpenAIは、内部モデルが生み出した発見について学術的な功績を主張することはしないと述べている。一方で、成果を理解し、原稿を執筆し、資料を作成した研究者の貢献は認められるべきだとした。
同社はまた、以前にサイモンズ財団へ500万ドルを寄付すると発表したことにも言及した。この資金は財団が管理・配分し、ワークショップ、学術会議、特別プログラムに用いられ、研究者がAIが生み出した成果を理解し、それを土台に研究を進めるのを支援する。


