Popula.comの記者兼編集者、マリア・ブスティロスによる記事
編集：エリック、フォーサイトニュース
ビットコインは幻想だ、集団的幻想だ、とよく言われます。サイバースペースに存在するデジタルな構築物、蜃気楼、シャボン玉のようにはかないものに過ぎません。ビットコインを裏付けるものは、それを買った愚か者たちの信念と、その愚か者たちからビットコインを買ったさらに大きな愚か者たちの信念だけです。
これらはすべて事実です。
しかし、おそらくさらに理解しにくいのは、ドルもまた幻想であるということです。ドルも主にサイバースペース上のデジタルデータで構成されていますが、紙幣や硬貨の形で存在することもあります。紙幣や硬貨は物理的な物体ですが、それらが表すドルはそうではありません。ドルは、それを支払い手段として受け入れる愚か者たちの信念と、再びそれを受け入れることに同意する他の愚か者たちの信念によってのみ裏付けられています。重要な違いは、少なくとも今のところ、ドルという幻想の方がより広く、そして強く受け入れられているということです。
実際、ドルの約90%は完全に抽象的なものであり、実体としては全く存在しません。ジェームズ・スロウィエツキは2012年に、「米国のマネーサプライのうち、紙幣や硬貨の形で存在しているのは約10%、約1兆ドルに過ぎない」と報告しました。（これは、総供給量13.7兆ドルのうち約1.5兆ドルに相当します。）銀行システムが気まぐれにドルを増発することを妨げるものは何もありません。2017年10月時点で、13.7兆ドルのM2マネーサプライのうち、13.5兆ドルは1959年以降に創出されたものです。つまり、M2はほぼ50倍に拡大したのです。
米ドルはいわゆる「フィアット」通貨です。ラテン語で「フィアット」は「存在させる」という意味で、「フィアット・ルクス」は光を出現させる、「フィアット・デナリ」はリラ、ボリバル、ドル、ルーブルを出現させるという意味です。歴史的に見て、国家指導者にとって通貨発行への誘惑は、ほとんど抗いがたいものでした。この無謀さの明らかな結果の一つがインフレです。1959年の1ドルの購買力は現在、12セント弱となっています。
ビットコインブロックチェーンは、この歴史的な弱点に対処するために構築されました。2140年頃に2100万枚目のビットコインが採掘されると、システムはそれ以上ビットコインを生成しなくなります。
詐欺師や窃盗犯は、あらゆる通貨システム（あるいはあらゆる価値保存手段）を支配し、さらには会計処理するために設計された構造を、常に抜け穴を利用して操作しようとします。（パナマ文書、バーナード・マドフによる650億ドルのポンジースキーム、ロンドン・ホエールズ、ロングターム・キャピタル・マネジメント・アンド・クレジット・インターナショナルの破綻、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館の盗難、2008年の金融危機、マウントゴックス、The DAO、USDTの盗難などを参照）。あらゆる価値保存手段が標的となります。合法か違法かを問わず、あらゆる交換システムを通じて富は創出され、失われる可能性があります。しかし、時に驚くべきことに、十分な数の人々が誠意を持って行動し、通貨システムの完全な崩壊を防いでいます。
暗号通貨と米ドルには根本的な違いがいくつかあります。例えば、ビットコインシステムにおける取引は、銀行や政府の権威ではなく、理論上は誰でも自由に参加できるパブリックコンピュータネットワークの力によって支えられた、偽造不可能な台帳に記録されます。さらに、ビットコインの供給量は最終的に固定されています。もちろん、暗号通貨の匿名性は、（無記名の）現金ほど完璧ではないかもしれません。
お金そのものは幻想であり、集合的な幻想です。私たちはお金を得ようと、増やそうと、守ろうと努力しますが、それでもお金の唯一の本質は象徴的な力です。ある意味、それは本当に畏敬の念を抱かせるものです。
最も重要なのは、グリーン紙幣、クルーグマンコイン、イーサリアム、あるいは英ポンド硬貨の価値についての私たちの共通理解です。そして、この共通理解には固定された意味はなく、常に変化し続けています。あらゆる通貨とあらゆる交換手段の価値は、様々な資産との固定為替レートの設定や金利による流動性の調整など、あらゆる試みがなされたとしても、不安定で抽象的なものです。お金とは、ネットワーク内の関係者の利益を代表し、常に進化を続けるプロトコルのネットワークに過ぎず、人間の信頼というネットワークにおいて常に脆い糸となってきました。
「難民の資本」、つまり国境を越えるために莫大な損失を被って取引せざるを得ないお金について考えてみましょう。しかし、それはあなたの「目に見えない」賃金、つまり銀行口座の別の数字とぶつかり合う一連の数字と何の共通点があるでしょうか？アボカドやコーヒーの価格は、給料日と市場に行く日の間で上がったり下がったりするかもしれません。自然災害では、人々は数ガロンのきれいな水のために、突如として法外な値段を支払う覚悟をしなければなりません。では、「1ドルの価値」とは一体何なのでしょうか？
ビットコインのような暗号通貨や、それを支えるブロックチェーン技術に対する一般的な反論は、通常の通貨の一時的かつ脆弱な性質を考慮していない。通貨が実在し、堅固であり、あるいは制度に対する人間の信頼以外の何物にも「裏付けられている」と仮定するならば、暗号通貨は理解できない。米ドルは「アメリカ合衆国の完全な信頼と信用」によって裏付けられている。しかし、それは実際には何を意味するのだろうか？
つまり、1ドルを米国財務省に持って行って両替を頼めば、1ドルが返ってきます。あるいは、希望すれば25セント硬貨4枚ももらえます。
残念ながら、ギリシャ、ベネズエラ、スペインといった不安定な政府による通貨危機は、様々な暗号通貨の急騰を引き起こしました。キプロス政府が2013年の銀行危機の解決にあたり、国民の銀行預金の7%を強制的に差し押さえようとした際、ビットコインの価格は急騰しました。これは、当時ユーロを保有し、債務を抱えた政府の下で生活していた多くの南欧人が、キプロスの銀行よりもビットコインを信頼できる「安全資産」と認識したためと考えられます。スペインの預金者もまた、「次は自分たちなのか？」と自問自答しているに違いありません。
要するに、既存の金融機関は欠陥だらけで、常に腐敗に陥りやすいのです。これは、ビットコインの謎めいた発明者がそのアイデアを思いつくずっと前からの事実です。ビットコインを立ち上げた「ジェネシスブロック」の中で、サトシ・ナカモトは次のように明確に述べています。「タイムズ紙、2009年1月3日：財務大臣は銀行への第二弾の救済策を実施しようとしている。」ビットコインは当初から政治的な動機に基づいたプロジェクトであり、その明確な目標は改ざん不可能なデジタル交換手段を構築し、既存の銀行システムに代わる優れた選択肢を確立することでした。
ビットコインを含むすべての暗号通貨の根底にある理論は、分散型コンピュータネットワークによって生成された記録は改ざん不可能であり、理論上は政府よりも優れた通貨の完全性保証を提供できるというものです。これまで、いくつかの大きな挫折はありましたが、ビットコインの基盤となるブロックチェーンシステムは、この理論を少なくとも部分的に証明してきました。2009年以降、100万ビットコイン以上が盗難されましたが、ビットコインの基盤となるシステムの分散型台帳、つまりビットコインの会計システムは、今日まで安定して変更不可能な状態を保っています。
ビットコイン初期に発生した数々の盗難や詐欺は、1920年代を舞台にした貪欲と腐敗を描いた映画『黄金の砂』を彷彿とさせます。確かに、瞬時に富を得られるという期待は人々を狂わせるのに十分です。しかし、貪欲は犯罪や狂気への傾向を生み出す一方で、金の価値を無価値にしてしまったわけではないことを忘れてはなりません。
真の警告は、ビットコイン台帳が改ざん不可能な状態を維持してきたのは、分散型システムと独創的な暗号化技術だけでなく、善意と合理性を持った開発者グループが誕生当初から導いてきたからこそである。初期の数々の危機を冷静に乗り越えてきたギャビン・アンダーセンという「消防士」がいなければ、ビットコインはとっくに消滅していたかもしれない。今日でも、絶え間ないフォークと成長痛は、システム全体にストレステストを課し続けている。現在（これはあくまで私の個人的な意見だが）、コア開発者はますます信頼を失いつつあり、多くの人が彼らが自分の利益だけを考えていると考えている。こうした不信感は、ビットコインという大義に永続的なダメージを与えるだけでなく、ブロックチェーン技術全体の未来を危うくする可能性がある。
もう一つの問題は、初期の暗号通貨投機家が以下の2つの理由から「騙される」可能性が非常に高いことです。
当時は、安全なストレージソリューションを作成することは困難でした。
通常の通貨を暗号通貨に安全に送金したり、暗号通貨から安全に送金したりするシステムはまだ成熟していません。
2014年にマウントゴックス取引所から約80万ビットコインが盗まれた事件は、暗号資産エコシステム全体に「原罪」の影を落としました。人々は「ビットコインがハッキングされた」と誤解しましたが、実際には最大の取引所がハッキングされたのです。昨年、ニューヨーク連邦準備銀行にあるバングラデシュ中央銀行の口座から6,300万ドルが盗まれた事件と同様に、問題はビットコインそのものではなく、アクセスチャネルにありました。
一部の人が詐欺を働いているというだけで「ビットコインは詐欺だ」と言うのは、ジェイミー・ダイモン氏の会社が怪しい取引をしているからといって「金融業界全体が詐欺だ」と言うのと同じくらい馬鹿げています。「ビットコインはダークウェブで麻薬の売買に使われている！」と言う人もいますが、ほとんどの100ドル札にはコカインの残留物が含まれています。もし100ドル札が嫌なら、余った100ドル札を送ってください。現金が犯罪に使われているという事実が、その正当性を否定するのでしょうか？いいえ。真実は、お金は本質的に汚れているということです。
現在ビットコインの取引を保護しているブロックチェーンシステムは、その価値が計り知れないため、近い将来、進化を遂げ、他のシステムと統合されるでしょう。ウォール街からサンドヒルロードまで、投資家たちは既にブロックチェーン企業に莫大な資金、時間、そして労力を注ぎ込んでいます。人類が「何かが本当に起こったのか」を検証する必要がある時、ブロックチェーン技術はプログラミングを通して不変の答えを提供することができます。サトシ・ナカモトが2009年に発表したシステムには欠陥がありましたが、彼は人類が銀行や政府といった外部機関に頼ることなく、完全な取引台帳を作成できることを証明しました。一度このステップを踏んでしまえば、後戻りはできません。
いかなる通貨の安定を維持するための努力も、常に「崩壊寸前」の状態にあります。操作や偽造の機会がある限り、人間の本性として、不正を企む者は常に存在します。先進国における限定的で脆弱な安定性でさえ、無数の信念を持った人々が常に警戒を怠らず、システムを絶えず修復し続けることが必要であり、100%の確実性は存在しません。「お金は実在する」という幻想を守るための闘いは、決して終わることはなく、終わることもありません。
