私たちがニュースで見るAI協働ツールの進化は、多くの場合、黒いターミナル画面の前でプログラマーがキーボードを打ち、AIが瞬時に数百行のコードを生成したり、複雑なバグを自動修正したりする光景だ。このギーク的な語り口が、AIツールはもともと技術者向けのコード生成器で、一般のオフィスワーカーのデスクからは遠い存在だという固定観念を世間に植え付けてきた。

データソース:Anthropic 公式ブログ「How people are using Claude Cowork」
しかし、Anthropicが公式に公開した直近のデータが、このフィルターを木っ端みじんに打ち砕いた。
Anthropicの公式ブログが開示したサンプルデータによると、2026年5月11日から31日までに収集された120万件の匿名セッションのサンプルにおいて、Claude Coworkの利用が最も多かったシーンはソフトウェア開発ではなく、わずか8.7%にとどまった。トップに立ったのはビジネスプロセスとオペレーションで、その割合は33.4%に達し、典型的なタスクとしてはレポートの整理や表の照合などが含まれる。コンテンツ制作とコピーライティングが16.4%でこれに続き、原稿の起草やスライド作成などをカバーする。
つまり、9割以上のユースケースで、人々はコードを書いていなかったのだ。代わりに彼らは、最先端のAIコラボレーションツールを使い、最も古典的で雑多な日々のオフィス業務を処理している。なぜ人々がAIで最も頻繁に行う作業はコードを書くことではなく、レポートの整理や表の照合なのか? このデータは、AIが実際の職場においてどのような役割を果たしているのかを明らかにしている。
打ち破られた「AI=コードを書く」というフィルター
この対照的なデータを理解するためには、まずなぜ世間一般に「AIは主にコードを書くもの」という錯覚が生まれたのかを理解する必要がある。
この2年間、AIプログラミングアシスタントは最も早く成熟し、大規模に実用化されたAIアプリケーションの形だった。GitHub Copilotであれ、さまざまなコード生成モデルであれ、それらは開発者コミュニティに大きな衝撃を与えた。コードを書くという行為は、高度な論理性と明確な正誤の基準を持ち、大規模言語モデルが強みを発揮するのに非常に適している。そのため、メディアはAIのブレークスルーを報じる際、コード生成を最も説得力のある事例として取り上げることが多かった。
しかし、プログラマーは全世界の労働人口のごく一部を占めるにすぎない。本当に巨大な労働者層は、財務、総務、人事、法務、営業、そしてさまざまなオペレーション業務の担当者だ。彼らの日常業務にはコードはほとんど登場しないが、日々生み出す作業量と効率化への渇望は、技術職の人々をはるかに上回る。
ビジネスプロセスとオペレーションが33.4%を占めるという数字は、まさにこの巨大な層の実際のニーズを映し出している。AIツールの敷居がプログラミング不要のレベルまで下がったことで、非技術職のユーザーが一気に主力となった。彼らはAIにシステムアーキテクチャの再構築を求めているのではない。先週5つのチャットグループに散らばった進捗報告をまとめて週報を作ったり、フォーマットの異なる3つのExcelの表を照合して差異を洗い出したりすることを望んでいるのだ。
ソフトウェア開発がわずか8.7%だったのは、プログラマーがAIを使わないからではなく、非技術職のベースが非常に大きく、なおかつ彼らの日常業務に、AIが肩代わりできる反復作業が大量に含まれているからだ。AIコラボレーションツールは、ギークの玩具という外皮を脱ぎ捨て、一般のオフィスワーカーにとっての「デジタルインターン」へと変貌しつつある。
33.4%の「ビジネスプロセス」では何が行われているのか?
公式の分類において、ビジネスプロセスとオペレーションは全体の3分の1を占めている。やや抽象的に響くこの言葉は、実際の職場では、極めて具体的で、かつ苦痛を伴う作業を指す。
レポートの整理は、その最も典型的な例だ。ある程度の規模を超える組織では、レポートは運営を維持する血液である。週報、月報、プロジェクト進捗報告、競合分析レポートなど、その種類は多岐にわたる。しかし、レポートを作成するプロセスは往々にしてひどく苦痛を伴う。プロジェクトマネージャーが週報を書く場合、まずJiraからタスクのステータスを取得し、各部門のグループチャットで未決事項を尋ね、次にメールボックスを開いて最新の顧客フィードバックを確認し、最後にそれらの断片的な情報をWord文書にまとめ、書式を整え、図表を添える。このプロセスは半日分の労働時間を消費するが、生み出される内容そのものに新しいビジネス価値はなく、情報共有のためだけに行われる。さらに厄介なのは、上司から急に別の切り口で集計し直すよう指示が飛んだ場合、その半日の作業がすべてやり直しになることだ。
表の照合もまた、ビジネスパーソンの悪夢である。財務担当者が月末に帳簿を照合する際には、銀行取引明細、内部帳簿、経費精算書の3つの表と格闘する。たとえ1円でも差異があれば、一行ずつ精査しなければならない。びっしりと数字が詰まった画面に目を凝らし続けなければならず、1つのミスが帳簿の不一致をまねき、部門全体の締め作業が滞ってしまう。総務担当者が勤怠表を確認する際には、各種の休暇届、残業申請、打刻記録の間の対応関係を探し出す必要がある。打刻を忘れて後から届け出た者もいれば、出張に出ていてシステムに記録されていなかった者もいる。こうした異常項目をすべて人の手で整理するのは、視力、忍耐力、集中力の大きな試練であり、ミスが生じれば深刻な結果を招く。
こうしたタスクをAIコラボレーションツールに任せると、プロセスは根本的に変わる。ユーザーは、5つのチャットグループの記録をエクスポートしてAIに投げ込み、「各自の進捗を抽出し、部門別に分類して週報のアウトラインを作って」と指示するだけで、数秒後には構造がはっきりした草稿が現れる。上司が別の切り口を求めてきたら、あらためて指示を出すだけで、AIは即座に再構成する。財務担当者は3つの表をアップロードし、「この3つの表で金額が一致していない項目を見つけ、明細をリストアップして」とAIに任せることができる。AIは退屈を感じず、小数点を見落とすこともなく、膨大なデータの中から瞬時に数行の異常値を特定する。
この33.4%という数字の背後には、無数のビジネスパーソンが無意味な機械的労働から解放された安堵のため息がある。彼らはAIに科学の難題を解く必要はなく、ただ命を削るような「汚れ仕事」を肩代わりしてほしいだけなのだ。
16.4%の「コンテンツ制作」と空白の文書に対する恐怖の克服
ビジネスプロセスに次ぐのが、16.4%を占めるコンテンツ制作とコピーライティングだ。このシーンもまた、職場のペインポイントに満ちている。
コンテンツ制作とは作家やメディア関係者の仕事だと誤解されがちだが、現代の企業では、ほぼすべての職種が文章を書くことから逃れられない。営業は提案書を書き、プロダクトマネージャーは要件定義書を書き、人事は求人票を書き、エンジニアでさえ技術仕様書の説明を書く。プロのライターではない人にとって、真っ白なWord文書やPowerPointのスライドを前にすると、しばしば「空白の文書恐怖症」が現れる。最初の一文をどう書き始めればいいか、構成をどう組み立てればいいかが分からず、カーソルが点滅するのを眺め続けて30分経っても、画面は真っ白なままだ。
スライド作成は特に苦痛を伴う。大量のテキストを限られた版面に収め、フォントサイズを調整し、図形の位置を揃え、配色を選ぶ──こうしたレイアウト作業に費やされる時間は、コンテンツを執筆する時間の何倍にも達することが珍しくない。多くの人がプレゼンの前夜、PowerPointの書式を微調整するために徹夜している。テキストボックスを左に2ピクセル動かしたり、2枚の画像を揃えたりするためだ。プレゼンが終われば、その丹念にレイアウトされたスライドは、フォルダの中に二度と開かれることなく眠る。
このシーンで、AIコラボレーションツールは「氷を破る者」の役割を果たす。ユーザーはゼロから考え始める必要はなく、いくつかの要点を入力するだけで、AIが初稿を生成してくれる。スライドなら、テーマと大まかな内容を渡せば、レイアウトと配色の整ったプレゼンテーション資料が直接生成される。初稿は不完全なことが多いが、修正のたたき台として機能する。人間の作業は「無から有を生み出すこと」から「修正して磨き上げること」へと変わり、心理的なプレッシャーも実際の作業量も大幅に低減する。「このページの背景を青に変えて、重要な箇所を太字にして」とAIに指示すれば、それが瞬時に行われ、メニューバーでボタンを探し回る時間を節約できる。
このコンテンツ制作の普及は、AIがビジネスパーソンの表現力の差を平準化しつつあることを示している。ロジカルに考えられるがレイアウトや言い回しが苦手な人でも、AIの支援によってプロフェッショナルな水準の文書やプレゼン資料を生み出せるようになる。
過小評価されている「つなぎの仕事」
Anthropicはこのデータを解釈する際、上位2つの高頻度シーンを「つなぎの仕事(Connective Work)」と定義した。これは極めて的確で洞察力に富んだ概念だ。
つなぎの仕事とは何か? それはプロジェクトを前進させるが、中心的な職務記述書には滅多に登場しないタスクを指す。弁護士の中心的な責務は法律相談と弁護だが、毎日大量の時間を文書フォーマットの標準化やアーカイブに費やしているかもしれない。採用マネージャーの中心的な責務は人材を見抜くことだが、毎日大量の時間を会議の設定や複数ラウンドにわたる面接のフィードバック集約に費やしている。
こうした仕事は直接的なビジネス価値を生まず、年次評価の業績欄に記載されることもない。しかし、誰かがやらなければプロジェクトは停滞し、チームは混乱する。それらは職場運営の潤滑油でありながら、ビジネスパーソンのエネルギーを消耗させる見えないブラックホールでもある。
従来の職場の言説では、常にコアスキルの向上に焦点が当てられ、こうしたつなぎの仕事をどう最適化できるかはほとんど注目されてこなかった。多くのビジネスパーソンが疲弊するのは、コア業務が難しすぎるからではなく、こうした雑多なつなぎの仕事に精力を消耗させられるからだ。コードを書くことは高い集中力を要するかもしれないが、表の照合は単調な繰り返しであり、こうした機械的反復は人間の精神にとって多くの場合より大きな消耗をもたらす。このことが、AIコラボレーションツールが介入したときに、ユーザーがこの種の仕事を最もアウトソースしたがる理由である。
AIは弁護士の法的判断を代替したわけでも、人事担当者の人を見抜く勘を代替したわけでもない。AIが引き受けたのは、「情報の組み立てと構造化」という汚れ仕事だ。それは部門横断的なコラボレーションにおける情報の隙間を埋め、弁護士が事件分析に、人事担当者が候補者評価に専念できるようにする。AIはチームの隙間を埋める接着剤となり、一人ひとりが真に人間の知恵と経験を必要とする仕事にこそ力を注ぐことを可能にしている。
弁護士の文書と人事担当者のフィードバック:リアルなシーンの再現
このコラボレーションの形をより直感的に理解するために、公式が提示した2つの典型的な部門横断的つなぎのシーンを見てみよう。
最初の場面は、弁護士が文書を処理する場面である。法律業界では、文書の書式や規範性に非常に高い要求がある。裁判所によって、訴状のレイアウトやフォント、さらには行間に至るまで具体的な規定が設けられている。ある弁護士が法律意見書を完成させた後、書式が規定どおりか、引用条文の表記が正しいか、ヘッダーやフッターが統一されているかを、1〜2時間かけて項目ごとに確認しなければならないこともある。こうした作業には法律的論理は必要なく、ただ忍耐力と注意深さだけが求められる。しかし、立て続けに裁判を終えたばかりの弁護士にとって、このような些細なチェックはまさに精神的な拷問である。
現在、弁護士は文書をAI協働ツールに渡し、「特定の裁判所の標準書式に従ってこの文書をチェックし、調整せよ」と指示できる。AIは基準に合わないレイアウトを自動的に識別して修正し、さらには引用法令の書式ミスまで検出できる。弁護士は最も核心的な法的判断と弁護戦略を保持し、機械的な書式確認作業をデジタル実習生に任せる。これにより時間を節約できるだけでなく、人為的なミスにより書式不備で裁判所から差し戻されるリスクも低減する。
第二のシナリオは、採用マネージャーが複数ラウンドの面接フィードバックを集約する場面である。典型的な採用プロセスでは、ある候補者は人事の一次面接、技術面接、事業部門面接、最終面接を経ることがある。各面接官はシステム内に自由形式のテキストでフィードバックを残す。ある面接官は詳細に書き、ある者は数行のみ、ある者は技術力に重きを置き、ある者はコミュニケーションスタイルに着目する。採用マネージャーは最終判断を下す前に、これらの散在しスタイルもまちまちなフィードバックをすべて読み通し、候補者の技術的強みやカルチャーフィットのリスクといった重要情報を抽出し、上級管理職向けの報告書にまとめなければならない。採用人数が多ければ、フィードバックを読むだけで目が回り、重要な詳細を見落としやすい。
今では、採用マネージャーはすべての面接フィードバックをAIに取り込み、「各面接官の候補者の技術力に対する評価を抽出し、合意点と相違点を要約せよ」と指示できる。AIは数秒で構造化されたサマリーを提示する。例えば、「3名の面接官はいずれもデータベース能力を認めているが、チームマネジメントスタイルについては意見が分かれている」といった具合である。採用マネージャーは依然として最終的な人物評価と採用決定権を保持するが、情報処理のプロセスは大幅に圧縮される。もはや冗長なフィードバックを逐語的に読む必要はなく、AIが抽出した要点に直接基づいて判断を下せる。
この二つのシナリオは共通してある法則を浮き彫りにする。非技術系職種におけるAIの実装は、彼らの仕事を奪うことではなく、ワークフロー上の障害を取り除き、人間の知恵と経験を必要とする核心的プロセスへより早く到達できるようにすることにある。
「画面を見つめて返信を待つ」から「クラウドで一晩走らせる」へ
このような使われ方の傾向の変化は、AIプロダクトの形態にも新たな要求を突きつける。もしAIがコードを書くような高度に対話的なタスクの処理にしか使われないなら、ダイアログボックスだけで十分である。しかし、報告書の整理や表の照合といった、時間はかかるが常に監視する必要のないタスクをAIが処理するのであれば、従来のダイアログボックス型のモデルは非常に使いづらく感じられる。
非技術系ユーザーは、画面を見つめてAIが一文字ずつ出力するのを待つ必要はない。彼らが必要としているのは、「タスクを指示し、その後は別の仕事に移り、戻ってきて結果を確認する」という非同期ワークフローである。ちょうど、実習生に資料整理を頼むとき、その背後に立ってキーボードを打つのを監視したりはせず、まとめ終わったら持ってきて見せてもらうように指示するのと同じである。
ユーザーは退勤前にAIにタスクを指示できる。例えば「今週収集した10本の業界レポートから核心データを抽出し、集計表を生成せよ」といった具合に。その後、ユーザーはPCを閉じて食事や休憩に出かけられる。AIはクラウドのバックエンドでそのタスクを実行し、デバイスがオンラインである必要はない。
人間の判断を要する段階に差し掛かると、AIは一時停止し、ユーザーのスマートフォンに確認リクエストをプッシュ通知する。例えば、AIが表を処理中に二つのデータソースが矛盾していることを発見した場合、どちらを基準にするかを尋ねるメッセージを送る。翌朝、ユーザーは通勤中の電車内でスマホから承認すれば、完璧な表がすでに出来上がっている。この「ダイアログボックス」から「バックエンドの代理人」への進化こそが、AIをビジネスパーソンの日々のリズムに真に溶け込ませる。それはもはや、わざわざ時間を割いて使うツールではなく、バックグラウンドで黙々と働くアシスタントである。
この非同期メカニズムは、非技術系職種にとって特に重要だ。彼らの仕事は中断や会議に満ちており、PCの前に長時間座ってAIと高頻度に対話するまとまった時間を確保するのが難しいからだ。バックエンドでの実行とモバイルでの承認は、AIを使う精神的な負担を下げ、AIの手助けをWeChatのメッセージを送るのと同じくらい気軽なものにする。
不完全なデータ図鑑と普通の人々への示唆
もちろん、この120万回のセッションデータは完璧な職場の全景図ではない。公式もデータの限界を認めている。
第一に、データはユーザーの職位名ではなく、タスクの種類によって分類されている。そのため、この33.4%のビジネスプロセスの中に、HRによるものがどれだけあり、財務によるものがどれだけあるのかを正確に知ることはできない。自動化システムのラベリングには、マーケティング、HR、財務などの機能を一律に「ビジネスプロセス」としてまとめてしまう粒度の問題が存在する。
第二に、サンプリング方式がトラフィックによる固定比率抽出ではなく、時間あたりの上限付き抽出であること。これにより、ピーク時間帯の利用率が若干過小評価されている可能性がある。また、約5%のセッションは個人的な非業務用途(パーソナルアシスタント、趣味、さらには寄り添い型の雑談など)であり、純粋な職場図鑑ではない。
しかし、こうした死角があるにもかかわらず、このデータは依然として非常に価値ある現実的な示唆を提供している。
一般のオフィスワーカーにとって最大の示唆は、自らのワークフローを見直すことにある。AIがあなたのコアスキルを代替できるかどうかを問うのではなく、あなたのワークフローの中に、誰もやりたがらないが誰かがやらねばならない「つなぎ」の作業がどれだけあるかを問うべきだ。
もし毎日20%以上の時間を、情報の運搬、書式の調整、表の照合に費やしているなら、あなたこそAI協働ツールの最も的確な対象ユーザーである。複雑なプロンプトエンジニアリングを学ぶ必要はない。普段最も嫌だと感じている反復作業をAIに説明し、それが初稿の作成を手伝えるかどうか試してみればいい。
AI協働ツールの脱神話化は、それが神輿から自席へと降りてきたことにある。それは極めて高い知能を要する科学研究の難題を解決するためのものではない。極めて高い忍耐力と体力を要する些細な日常業務を解決するためのものなのだ。33.4%の利用がビジネスプロセス処理に充てられているという事実は、人々が現在におけるAIの最も実務的な活用法を既に見出したことを示している。すなわち、人間を機械的労働から解放し、人間がやるべき仕事に専念させることである。


