Tetherの超過準備が四半期で半減、金とビットコインが原因か?

2026年9月、テザーとファサナラ・キャピタルは、金融テクノロジー企業への融資を目的としたプライベート・クレジット・ファンド「StableFund」を立ち上げました。このファンドは、テザーの出資分や調達目標額などが明らかにされていない点が特徴です。

一方、2026年第2四半期のテザーの超過準備金(安全余裕)は、ビットコインと金の価格下落により、前期の82億ドルから41億ドルへと半減しました。これは、資産価値の変動リスクが現実のものとなったことを示しています。

さらに、テザーは2022年に「準備金内の担保付貸付をゼロにする」と約束したにもかかわらず、貸付残高は現在134.5億ドルにのぼり、超過準備金の3倍以上となっています。加えて、テザーはStableFund内で、発行者(融資先の開拓)、アドバイザー(ファンドの助言)、決済インフラの提供者という多重な役割を担っており、利益相反のリスクが懸念されます。

米国の新法「GENIUS法」では、2028年までに安定コイン発行者の保有資産が厳格に制限されます。テザーは、この規制の枠外でプライベートクレジットファンドを組成しています。決定的なのは、テザーの超過準備金が3か月で半減したにもかかわらず、ファンドへの出資額や原資が開示されていないことです。

今後の焦点は、第3四半期報告書における超過準備金の回復状況、担保付貸付の増減、そしてStableFundへの出資が準備報告書にどのように計上されるかです。

要約

著者:Zennon Kapron、Forbes

翻訳:AididiaoJP、Foresight News

9月9日、TetherとFasanara CapitalはStableFundの立ち上げを発表した。これはプライベートクレジットファンドで、両発起人が合計4億ドルを初期資金として出資し、第三者機関から最大30億ドルを調達することを目指す。Tetherは共同発起人として、USDTに関連する融資機会の探索を担当し、ステーブルコイン決済インフラを提供する。

注:Fasanara Capitalはロンドンに本社を置くグローバル資産運用会社で、2011年にFrancesco Filia氏が共同設立し、現在の運用資産は約60億ドル。フィンテック主導のプライベートクレジット戦略に特化している。

同ファンドは60カ国以上のフィンテックプラットフォームに融資し、中小企業向け融資、消費者信用、貿易債権、サプライチェーンファイナンスをカバーする。ファンドはケイマン諸島に登録されている。ただし、プレスリリースでは4億ドルのうちTetherがいくら出資したかは明記されておらず、Tetherもその後開示していない。

6週間前の7月31日、Tetherは6月30日時点の準備報告書を発表した。総資産は約1877.5億ドル、総負債は約1836.4億ドル。両者の差である41.1億ドルが、Tetherの言う「超過準備」、すなわち準備資産が負債を上回る部分であり、Tetherの安全マージンに相当する。

この数字は3月31日時点では82.3億ドルで、Tetherは当時これを過去最高としてプレスリリースの見出しに掲げた。1四半期の間に、超過準備は41.2億ドル減少し、減少率は50.1%となった。一方、同期間の負債の変動はわずか1.06億ドルだった。

この2つの出来事を並べてみると、深く掘り下げる価値がある。

超過準備が半減した理由

Tetherは減少の理由を項目ごとに説明しておらず、プレスリリースでは同四半期は「堅調」だったとしている。しかし、答えは監査法人BDOの報告書に隠されている。

Tetherの準備は米国債だけではない。6月30日時点の準備資産は以下の通り。

  • 1149.6億ドルの米国債
  • 256億ドルのリバースレポ
  • 4030万ドルの現金および銀行預金
  • 188.4億ドルの貴金属
  • 58億ドルのビットコイン
  • 37.6億ドルの上場株式
  • 52.4億ドルのその他投資
  • 134.5億ドルの担保付きローン

2024年末に保有していた65億ドルのマネーマーケットファンドはすでに清算済みだ。

問題は金とビットコインにある。BDOが採用した金価格は、3月31日の1オンス当たり4668.06ドルから6月30日の4008.02ドルへと下落し、下落率は14.1%。ビットコインは68200ドルから58600ドルへと下落した。

金とビットコインの合計は246億ドル。一方、超過準備はわずか41億ドルだ。この2つの資産が17%変動するだけで、超過準備はすべて消し飛んでしまう。

BDOの資本ブリッジのデータはさらに明確だ。グループの年初資本は63.4億ドル、上半期の財務結果はマイナス31.7億ドルで、9.43億ドルの資本増加を経て、最終的に41.1億ドルが残った。

金とビットコインの保有額が剰余金の6倍に達する企業にとって、2.2%の安全マージンが意味するのは、金価格とビットコインが下落を続ければ、超過準備はさらに侵食され、損失はまだ帳簿上で完全には認識されていないということだ。

Tetherは2025年の100億ドルの利益と、監査済みの68.14億ドルの剰余金を根拠に実力を証明できるが、方向性は明確だ。1年前、超過準備は負債の3.5%だったが、2024年末には5.2%、現在はわずか2.2%となっている。減少の原因はユーザーの償還ではなく、資産の価値下落だ。

かつてゼロにすると言っていたローン

次に担保付きローン、すなわちTetherが借り手に貸し付け、担保で保全されたローンを見てみよう。

2022年12月、FTX破綻後、Tetherは「今から2023年全体を通じて、準備金の中の担保付きローンをゼロにする」と約束した。当時のローン規模は61億ドルだった。

しかし実際は、1年後には48億ドル、2024年末には81.9億ドル、2025年末には170.4億ドルとなった。2026年6月30日時点では134.5億ドルだ。Tetherは23.8億ドルの減少を「15%の削減」と呼んでいる。

134.5億ドルの担保付きローンは、41億ドルの超過準備の3.3倍に相当する。

BDOは借り手と担保の種類を開示していない。ローンについての表現は「過剰担保され、定期的にモニタリングされている」となっており、これまでの3回の報告書では「流動資産で全額担保されている」とされていた。この表現の変化は注目に値する。

超過準備は第1四半期に記録を更新し、第2四半期に半減した。同時に、Tetherは3年前にゼロにすると約束したローンを削減している。第3四半期には、さらに融資ファンドを立ち上げた。

これは唯一の新規融資事業ではない。ブルームバーグが今月報じたところによると、6月末時点で米国の貴金属ディーラーGold.comのTetherに対する債務は約14.5億ドルで、Tetherは同ディーラーの17億ドルの貴金属リースの大部分の資金調達に資金を提供した。11月、Tetherは約15億ドルのコモディティ貿易信用を供与し、「大幅な拡大」を計画していると述べていた。6月には、投資先の融資機関Lednとともに、XAUTゴールドトークン保有者が今年後半にこれを担保に資金を借り入れられるようになると発表した。

Tetherの立場は、その投資は「会社の超過資本と利益によって資金提供され、USDT準備金から完全に分離されている」というものだ。担保付きローンは準備金の内側にあり、StableFundへの出資コミットメントはおそらく準備金の外側にある。しかし、StableFundのプレスリリースも6月の準備報告書も、この点を明確に説明していない。

問題は集中度ではなく、役割の衝突にある

Fasanara自体は問題ではない。この会社はFrancesco Filia氏が2011年にロンドンで共同設立し、運用資産は60億ドルを超え、10年にわたりフィンテックのオリジネーターを通じて融資を行ってきた。これはまさにStableFundが説明する事業だ。

たとえ分離が事実だとしても、Tetherがこのファンドに投じる1ドルごとがグループ資本から出ているとしても、問題は消えない。その理由は、この構造におけるTetherの多重の役割にある。Tetherは発起人として融資の探索を担当し、ローンを保有するファンドに助言するアドバイザーであり、ファンドが移転する資金を発行し、自ら運営するレールの上で動かしている。

Filia氏はTetherの価値を「世界最大のステーブルコインネットワーク、巨大な資本力を有する暗号ネイティブの投資家基盤、そしてUSDTのレール」と表現している。同氏はGTRに対し、ローンは従来の通貨のままにでき、「ローン自体もファンド持分もトークン化する必要はない」と語った。トークンは資金を移転するだけだ。

しかし、いったんStableFundのローンに問題が生じれば——60カ国にわたり、消費者信用と中小企業向け融資を含み、Fasanaraが提携する141のフィンテックオリジネーターを通じて実行される——Tetherにはそれらを支援する評判上の理由が生じる。そして、安全マージンがわずか2.2%の企業が下す支援の決定は、資金がどの口座から出ようとも、本質的には準備金の問題なのだ。

9月22日までの90日間で、USDTの流通供給量は約28億ドル減少し、減少率は1.5%だった。これは取り付け騒ぎではない。第3四半期の準備報告書は、同期間の超過準備の推移を示すことになる。

Tetherが迂回しようとしているルール

《GENIUS法》は2025年7月18日に署名され、認可された支払いステーブルコイン発行者の準備金の範囲を規定している。現金、保険預金、残存期間93日以内の米国債、オーバーナイトレポ、政府マネーマーケットファンドなどだ。範囲は限られている。

第4(a)(2)条は、準備金は「認可された支払いステーブルコイン発行者によって直接的または間接的に担保設定、再担保、または再利用されてはならない」と規定しており、例外は狭い。財務省による発行に関する規則案は8月18日に公表され、コメント期限は10月19日、法案は2027年1月18日に発効する見込みだ。

Tetherの対応策はUSATだ。これはAnchorage Digital Bankを通じて1月27日から発行されている独立したトークンで、コンプライアンスを目的としている。同じプレスリリースでは、USDTがコンプライアンスに「向かっている」と述べている。

法案は2つの重要な日付を設定している。第3(b)条は、米国のデジタル資産プラットフォームが法案制定から3年後(2028年7月18日)に非準拠のステーブルコインを提供することを禁止する。第18条は、外国の発行者が、財務省がその本国の制度に同等性があると認定した後に米国市場に参入することを認める。

StableFundはまさにこのルールが防ごうとしている構造であり、ただルールの外側の一層に組み立てられているだけだ。《GENIUS法》は外国の発行者の親会社が自己資本でプライベートクレジットを組成することを阻止していない。阻止しているのは、準備金がそのために使われることだ。だからこそ、未開示の数字——4億ドルのうちTetherがいくら出資し、どこから出たのか——が、ファンドの規模そのものよりも重要なのだ。

ステーブルコイン発行者の約束は、額面どおりに償還することだ。評価額が間違った方向に動いたとき、約束を果たすのは剰余金にかかっている。そして6月末の剰余金は41億ドルで、3月の半分だった。

何に注目すべきか

第3四半期の準備報告書は10月末前後に発表される見込みで、3つの重要な注目点がある。

第一に、超過準備が金価格の回復とともに回復するかどうか。金とビットコインが反発すれば、安全マージンは回復するかもしれない。下落が続けば、圧力はさらに強まるだろう。

第二に、担保付きローンの項目が引き続き減少するのか、それとも再び増加するのか。Tetherは3年前にゼロにすると約束したが、実際の規模はむしろ拡大した。この傾向が逆転するかどうかは注目に値する。

第三に、StableFundへの出資コミットメントが準備報告書に現れるのか、それともグループ報告書にのみ現れるのか。これは、この資金とUSDT準備金の間にファイアウォールがあるかどうかを決める。

さらに追跡する価値のあることが2つある。KPMGが8月13日に発表した2025年の監査では、剰余金がBDOの同日付報告書より4.76億ドル多いことが判明したが、その根拠をTetherはまだ説明しておらず、照合があれば助けになるだろう。財務省が第18条に基づいて外国の発行者に対して行う同等性の認定は、USDTが2027年以降に米国に入るための関門であり、次の問いに答えなければならない。すなわち、自らがアドバイザーを務めるファンドのためにプライベートクレジットを組成する発行者は、それを許されない発行者と同等と言えるのか、という問いだ。

第2四半期のプレスリリースは準備金が堅調だと述べた。おそらくそうだろう。しかし、安全マージンの意味は、準備金がもはや堅調でなくなる日にこそある。Tetherは1四半期で安全マージンの半分を失い、プライベートクレジットの組成で応えた。

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著者:Forbes

本記事はPANews入駐コラムニストの見解であり、PANewsの立場を代表するものではなく、法的責任を負いません。

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